世界最大の経済大国である米国では量的緩和政策が終了し、いよいよ年内にも利上げが予測される一方、先進国を中心とした世界的な低金利状況にまったく反転の兆しが見られない。
こうしたグローバルな低金利状況はまだしばらく続きそうだ。
欧州の異常な状況
いわゆるG10と呼ばれる先進国通貨の国債利回りを見てみると過去に前例のない異常なマーケット状況となっていることがわかる。
(2015年4月10日現在)
まともに金利が付いているのはオセアニアの2か国(オーストラリア・ニュージーランド)ぐらいだが、両国ともかつては高金利通貨といわれていたころの水準と比較すると低い金利レベルとなっている。
そして何よりも欧州国債は財政懸念が少ない国の3~5年物の国債ではマイナス利回りで取引されている。
つまり債券を償還まで保有することとした場合、購入した時点で損失となることが確定するのである(現地通貨ベース)。
ちなみに今年1月に中央銀行が突然対ユーロでの為替レート上限を撤廃し、数多くのFX(為替証拠金取引)投資家を破綻に導いたスイスに至っては10年債までマイナス利回りとなっている。
低・マイナス金利の最大の理由は、量的緩和政策が採られていることである。同政策では日本は大先輩(2001年~)であるが、欧州中央銀行(ECB)も債券の買い入れによる量的緩和策の採択を決定(2015年1月)。
買い入れは月額600億ユーロのペースで本年3月から少なくとも2016年9月まで実施されることになっており、ECBは景気支援とデフレ回避を目指している。
このような状況下、欧州では信用懸念以外で、いわゆる健全な金利上昇が起こるのは当面先のようだ。
年内利上げが見込まれる米国でも低レベルの長期金利は継続
一方、既に量的緩和政策(QE3:2012年9月~2014年10月)から脱却し、今年中にも政策金利の引き上げが予測されている米国はどうであろうか。
多くの市場関係者やエコノミストは利上げを根拠として長期債金利の上昇を予測している向きが多いように思えるが、果たして本当に米国の金利は上昇するのであろうか?
市場の様々な指標は米国の金利さえもそう簡単には反転しないことを示唆しているようにもみえる。
特に、今月発表された3月の米国雇用統計は、非農業部門雇用者増加数が市場予想の24万5,000人に対し12万6,000人にとどまったことからFRB(米連邦準備銀行)や市場参加者にとって衝撃的な結果となった。
雇用者伸び悩みの最大の要因はやはり原油安であろう。現状の1バレル=50ドル前後という価格でも、シェールガスへの対抗措置として中東産油国が減産に踏み切らない意向をはっきりと表明しており、少なくとも向こう半年程度はこの要因により金利が上昇に転じることはないと思われる。
そしてもう一点、根強い債券・利回り需要の証左として挙げておきたいのが長期債の利回り曲線(イールドカーブ)の形状である。
イールドカーブとは債券の年限ごとの利回り(金利)を線グラフ化したものであり、先行き金利が上昇すると見込まれる場合は年限が長くなるほどカーブが上向きになり(スティープ)、逆の場合はカーブが平坦化(フラット)するのが通常である。
また先行きの金利の低下を極端に織り込む場合は、年限が長いほどカーブが下向き(逆イールド)になるケースもある。
あまり大きな話題とはなっていないが、米国の30年債利回りは今年に入り史上最低のレベルを更新している。
メディアなどで「長期債」というと10年債利回りを指標とすることがほとんどである。
2年前に記録した史上最低利回り1.47%を上回っている10年債利回り(年初来最低1/30 1.64%、4/17現在1.87%)を基にすると、まだ「史上最低の長期金利」との報道とはならず、ここに債券への投資家の強い需要が見て取れる。
先行きの景気と金利動向に対し、より慎重なあるいは懐疑的な市場参加者が、現状ではまだ相対的に高い利回りを求めて購入債券の年限を長期化していると考えられるのである。
あるいは、欧州の異常低金利から利回りを求めて米国債に流れてきている資金も膨大な規模となっていることも想像に難くない。
具体的に10年-30年債の利回り差(スプレッド)で見てみよう(下図グラフ)。
QE3開始時は1%を超えていたものが徐々に縮小し、足元は約0.6%程度と、金利の絶対的水準の低下のみならず長い年限の債券利回りがより低下する現象が確認できる。今回の現象の主因は、不足気味の米国債に対する世界的な需要が長期金利を押し下げていることにあるといえる。
このような「イールドカーブが潰される」状態は非常にタイトな債券需給を示しており、先行きの相場も堅調なものであることを予感させるに十分なものといえよう。(ZUU online 編集部)
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