ヨーロッパから独立を勝ち取ったその後

ヨーロッパから独立を勝ち取ったアフリカのリーダーとして、彼は周辺諸国の独立も支援していく。空港、幹線道路、アコソンボダムなど、ガーナが経済を今も支えるインフラの多くが、この時期に計画、建設されたものだ。世界最大級の人工湖ヴォルタ湖畔で発電 した電力は、隣国に輸出され、周辺諸国の電力をも支えている。しかし、積極的なアフリカ諸国への独立支援が内政の停滞を招き、アフリカで最も先進的だったガーナの財政を傾けることになった。独裁色を強めたクワメは、外遊中のクーデターにより失脚した。その後、ガーナは軍事政権が幾度か交代することになるが、いずれも無血で、内戦状態に陥ったことがない。

「ガーナ人はプライドが高い」と評する外国人の声をよく耳にするが、その背景には、こうした歴史的経緯が影響していることは間違いないだろう。彼らは、欧州と対等に貿易をし、征服されても、徹底的に抵抗し、他国に先駆けて自由を勝ち取ったブラックアフリカのリーダーだったという自負がある。大らかで平和を愛する国民性と、安定した政情に惹かれ、経済圏としては勝るナイジェリアではなく、ガーナに拠点を置く国際企業も多い。ガーナの治安は、他のアフリカの国々に比べ格段に良い。肌感覚でいうと、夜間、強盗に気をつけ、戸締まりに用心することはもちろんだが、日中、女性が一人で歩く分には問題ない。好ましくはないが、夜一人でタクシーに乗っても、特に問題は起きないだろう。

現在、ガーナの人口は約2,550万人。7割を占めるキリスト教徒とイスラム教徒が仲良く暮らしている。南部、沿岸部の都市ではキリスト教徒が多勢で、北部の乾燥地帯にいくほど、イスラム教徒が多くなる。ナイジェリアに次ぐ、西アフリカで2番目の大国で、綺麗な人口ピラミッド型を描く。 GDPは2013年で約442億ドル、長崎県とほぼ同じ経済規模だ。

商圏として物足りないという声も聞こえるかもしれない。 確かに、この国に、日本と同じ市場競争が存在すれば、そうだろう。しかし、依然、一次産業に依存したこの国では、自動車、エアコン、洗濯機・・・足りないものばかりだ。

そして、西アフリカのゲートウェイガーナから、 ECOWAS (西アフリカ諸国経済共同体/Economic Community of West African States )に属する15カ国、約3億4,000万人の消費圏が広がっている。フランス領下に置かれた国が多い西アフリカ地域は、フランス語を公用語にする国も多いが、英語圏のガーナとナイジェリアだけでも、ECOWAS圏人口の6割を占める。2030年には、ECOWAS圏の人口は4億5,000万人(King’s College London調べ)を超えるという報告もある。

さて、本当ににガーナは取るに足らない経済圏だろうか?

<著者プロフィール>
大山 知春(おおやま・ちはる)
成蹊大学文学部英文学科卒業。Nyenrode Business University MBA取得。ファイナンシャル・コンサルタントとして、みずほフィナンシャルグループでは東京・バンコクで勤務。2013年8月、ビジネススクール在学中にガーナにてE-Commerce とコンサルティングを軸とした MindNET Technologies Ltd. を共同設立。ガーナ初のファッション&ライフスタイルグッズに特化したオンラインストア、 VIVIA.com.gh をスタートさせる。その後、ガーナと日本の通商を活性化させるため、 VIVIA JAPAN 株式会社を設立。ガーナ原産の天然素材を使ったオール・ナチュラル・スキンケアブランド JUJUBODY を展開する。