低価格競争と中食拡大の影響

国内の外食産業の市場規模は、少子高齢化や中食市場の拡大などから、1997年の29.0兆円をピークに漸減傾向となっている。その後、景気の回復とともに、2012年頃から回復が見られたものの、2014年からは消費増税による消費マインドの悪化やコンビニ、スーパーなどとの中食市場をめぐる競合などから、再び厳しい状況におかれている。

ワタミの2013年度における売上高は、外食事業が約699億円、宅食事業が約428億円、介護事業が約350億円。全体の売上のなで外食事業が占める割合はすでに47.3%と5割を割っている。しかし依然としてワタミの中核事業であり、店舗数も2014年12月末で597を数えている。

ワタミ不振の要因のひとつが、2008年8月以降続いてきた居酒屋の客数の減少である。この事態を打開するために、ワタミが先頭に立って値下げに踏み切ったことから、居酒屋チェーン業界全体が値下げ合戦を繰り広げる結果となり、デフレスパイラルに陥った。

また、2011年3月の東日本大震災以降、食費における家計消費の傾向が、安さを求める層と付加価値を求める層に二極化した。また「家呑み」など、コンビニやスーパーなどで食品や酒を購入し自宅で食事する、いわゆる「中食」の傾向も強くなり、競合が激しくなった。外食でも、ファミリーレストランなどの業態との競合も激しくなっている。

さらに宅食事業と介護事業でも、施設の入居率や宅食の利用率が伸び悩んでいる。

介護事業では、現在107ある有料老人ホームの入居率が2013年を境に下がる傾向にあり、宅食事業も全国540の営業所から宅配される調理済み食品の数も、25~26万食までに落ち込んでいる。


新社長に課せられた課題

さらにワタミの経営不振に暗い影を及ぼしたのがブラック企業の汚名である。2008年に起きた「過労自殺」の問題がまだ尾を引いており、若者から支持されてきた居酒屋の企業イメージが、この問題を契機に「ブラック企業」へと一転し、若者を中心とする客数の激減、アルバイト人材の採用難、ひいては経営不振へと結びついた。また人手不足は、介護事業や宅食事業にも影響している。

アルバイト出身の清水新社長に課せられた課題は多い。外食部門における業態の見直しやイメージの払しょくに加え、将来の伸びが期待されていた介護や宅食事業における立て直しも急務。まさに新社長には、抜本的な経営戦略の見直しが求められている。

(ZUU online 編集部)

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