日本の金融市場を把握する上で欠かせない株価指数、それは日経平均株価とTOPIXである。両者とも、ニュースや新聞で毎日見かける言葉だが、それぞれの指標の違いや特徴を正確に理解している人は、実は少ないのではないだろうか。また、株式に投資しようと考えている人は、日経平均とTOPIX以外の株価指数や、海外の株価指数にも注目していただきたい。今回は、株価指数とその活用方法について見てみよう。
日経平均株価とは
日経平均株価とは、東京証券取引所第一部に上場している1,890銘柄(2015年5月末現在)から任意に選ばれた、225銘柄の株価の平均値であり、これは「日経225」「Nikkei225」などの通称で知られている。この225銘柄は、トヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャルグループ、ファーストリテイリングなどの日本を代表する企業が含まれており、金融、製造、小売等様々な業種から、売買が活発に行われている流動性が高い銘柄選ばれている。あくまで普通株式が対象となるので、ETFやREIT、優先出資証券、子会社連動配当株式などは選定対象ではない。
また、日経平均株価を構成する225銘柄は、年1回、流動性や業種のバランスが見直され、必要に応じて銘柄の入れ替えが行われている。日経平均株価の算出方法は以下の通り。
日経平均株価 = 225銘柄の株価合計/除数(指数の連続性を保つため調整された値)
日経平均株価は、選ばれた225銘柄の株価を単純に足し合わせて、225で割れば算出されると考えれば良いが、実際には「みなし額面による調整」と「除数の修正」という計算が加えられている。
日経平均株価過去の推移
1950年から算出されてきた日経平均株価。1970年までは東京証券取引所が算出していたが、現在は日本経済新聞社が算出・公表を行なっており、日本の株式市場を代表する指標のひとつとなっている。その値は、これまでどのように推移してきたのだろうか。
1980年12月終値が7,116円30銭だった日経平均株価は、その後バブル時代に突入し、1989年12月に過去最高値である3万8,915円87銭となる。しかし、バブル崩壊によって翌年の1990年12月の終値は2万3,848円71銭に。そして小さな乱高下を繰り返しつつ、2002年12月には、終値を8,578円95銭まで下げた。そしてまだ記憶に新しい、リーマンショックから始まった世界的な金融危機により、2009年3月には7,054円98銭となり、バブル崩壊後最安値を記録する。
近年は、アベノミクス政権による景気回復の流れに乗り、2015年4月に株価が2万円を突破した。2009年の最安値からわずか6年で、日経平均株価は3倍近く値上がりしたことになる。リーマンショック時にうまく株式投資をした投資家の中には、現在の好景気により大きな利益を得た人も少なくないだろう。日経平均株価は、日本経済そのものを映し出している指標と言える。
日経平均株価とTOPIX
次に、日経平均株価と同様に、日本の株価指数として重要なTOPIXについて説明しよう。TOPIX(東証株価指数)とは、Tokyo Stock Price Indexの略で、東証一部に上場している全銘柄から算出される値である。基準日としている1968年1月4日の時価総額(株価×発行済み株数:つまり、会社をまるごと購入するために必要な金額)を100とした場合に、現在の時価総額がどのくらい増えたのか、減ったのかという動きを示している。
基準日の時価総額からの動きを示した指標なので、日経平均株価のように「~円」ではなく、「~ポイント」という単位で表されるのが特徴だ。また、企業が有償増資をした場合や、新規上場や上場廃止等があった場合は、株価が変わらなくても時価総額が変化してしまうため、時価総額が修正して計算される。TOPIXの算出方法は以下の通りである。
TOPIX = 現在の時価総額 /基準日(1968年1月4日)の時価総額 × 100
では、先ほどの日経平均株価とTOPIXには具体的にどのような違いがあるのだろうか。日経平均株価もTOPIXも、ざっくり言えば、「指標が上がれば相場がいい。指標が下がれば相場が悪い。」と判断すれば良いだろう。しかし、両者はいつも揃って同じような動きをするとは限らない。日経平均株価は、株価が高い銘柄に影響されやすく、TOPIXは、時価総額の大きい(会社の規模が大きい)銘柄に影響されやすい、という特徴がある。さらに、TOPIXは、東証一部に上場している全銘柄を対象としているので、日経新聞社によって選ばれた225銘柄の株価の平均値である日経平均株価よりも、市場全体の動きを把握するのに適しているだろう。この日経平均株価とTOPIXの違いから、相場の流れを読み解くために「NT倍率」という指標がある。
NT倍率とは?
NT倍率とは、日経平均株価「N」をTOPIX「T」で割って算出される指標である。算出方法は以下の通りだ。
NT倍率(単位:倍)=日経平均株価 / TOPIX
NT倍率は、日経平均株価とTOPIXのどちらが現在強いのかを表している。通常は10倍程度の値であることが多いNT倍率なのだが、これはどの銘柄が市場全体に大きな影響を及ぼしているのかを分析する際に、この指標が役に立つ。
市場全体の株価が上昇している時にNT倍率が上昇している場合は、日経平均株価(株価が高い銘柄に影響されやすい)の上昇率が、TOPIX(時価総額が大きい銘柄に影響されやすい)の上昇率を上回っているということだ。これは、株価が高いハイテク銘柄などの上昇率が高いために、相場が良くなっていると判断できる。逆に市場全体の株価が下落している時に、NT倍率が下落している場合は日経平均株価(株価が高い銘柄に影響されやすい)の下落率がTOPIX(時価総額が大きい銘柄に影響されやすい)の下落率を上回っていることになる。
NT倍率は株式市場全体の動向を把握するために役立つので、日経平均株価やTOPIX同様に、投資銘柄を決める際には参考にしていただきたい。
注目の株式指標「JPX日経インデックス400」
日経平均株価やTOPIX、NT倍率の他に、市場の動きを把握する時に役立つ指標をいくつかご紹介しよう。
JPX日経インデックス400
まずは、「 JPX日経インデックス 」。これは、日本取引所グループ、東京証券取引所、日本経済新聞社が共同で開発し、2014年1月6日から公表が始まった新しい株式指数である。東証一部、二部、マザーズ、JASDAQの銘柄から、一定の選定基準によってスクリーニングされた400銘柄により算出される。銘柄の選定基準としては、過去3期いずれかの期で債務超過した企業、過去3期すべての期で営業赤字の企業、過去3期すべての期で最終赤字の企業などが排除されており、直近3年間の売買代金や選定基準日時点における時価総額が大きい銘柄が選定される。
さらに、企業の資本効率を示す「 ROE 」(自己資本利益率)を中心に営業利益、時価総額を点数化し、400銘柄を選定している。JPX日経インデックスの特徴はなんといってもROEが高い銘柄を選別しているとこにある。ROEは近年非常に注目されている指標であり、簡単言うと、株主が出資したお金に対してどれだけ稼げているかの収益力を測ることができるものだ。これまで欠如していた株主を意識した経営が求められる日本企業ではROEを意識して中期経営計画に盛り込まれ始めている。
このようにJPX日経インデックスは、株主を意識した経営、そして収益力もある企業が集まっている株式指数ともいえるため、今後ますます注目を集めそうだ。
日経株価指数300
次は「日経株価指数300」である。これは、より少ない銘柄で市場の実勢を的確に表すことを目的に開発され、1993年10月から公表されている。東証一部に上場する銘柄から選定された300銘柄により算出されるが、日経平均株価同様に、ETF、REIT、優先出資証券、子会社連動配当株などの普通株式以外は除かれる。日経平均株価は、225銘柄の平均株価だが、日経株価指数300はTOPIXと同じ時価総額型の指数なので、時価総額が大きい発銘柄の値動きに影響されやすいという特徴がある。
日経平均株価、TOPIXに影響を与える海外株価指数
今度は、海外における様々な株価指数について見てみよう。まずは、アメリカの株価指数として有名な「NYダウ」だ。NYダウは、「ダウ平均」や「ダウ工業株30種」とも呼ばれている。世界的なビジネス紙であるウォールストリート・ジャーナルの発行元であるダウ・ジョーンズと、格付け会社のスタンダード&プアーズの合併会社であるS&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズが公表している。NYダウは、アメリカを代表する優良30銘柄を選出し、指数化したもので、ITのアップルやマイクロソフトを筆頭に、ゴールドマンサックスやナイキなどが含まれている。
NYダウは、アメリカ国内にとどまらず、世界中から注目されている指標だが、日本の日経平均株価やTOPIX等の指標と、NYダウに関連性はあるのだろうか。一般的には、NYダウが上がると、日本の株価指数も上がると思われているが、実際のところ、必ずしも連動しているとは限らない。2015年の1月から6月までのNYダウと日経平均株価は、右肩上がりであるという大きな動きは相関がある。
しかしながら、例えば2012年の8月から12月の両者の指標を比べてみると、NYダウが上がると日経平均株価が下がり、NYダウが下がると日経平均株価が上がるという、全く逆の動き方をしている。アメリカの市場と日本の市場は密接な関係があるのは事実だが、その他中国やインドなどのアジア各国の市場や、ヨーロッパ市場の動向、そして為替の動きなど、様々な要素が影響しあって相場が動くので、NYダウと日本の株価指数は必ず連動するわけではないのだ。
その他、アメリカの株式指数として有名なのが、「NASDAQ」と「S&P500種」。NASDAQは、アメリカの店頭株で構成される時価総額加重平均指数である。一方、 S&P500種は、アメリカの全主要業種を代表する500銘柄で構成され、経済のパフォーマンスを表す時価総額加重平均指数である。
次に、ヨーロッパ市場を把握するために役立つ指標を3つご紹介しよう。まず、イギリスの「FTSE100」。これは、ロンドン証券取引所上場の時価総額上位100銘柄で構成される時価総額加重平均指数である。また、ドイツの「DAX」は、フランクフルト証券取引所上場されているドイツ企業のうち、優良とされる30銘柄を対象としたトータルリターン指数で、指数値計算には浮動株を使用している。フランスの指標「CAC40」は、パリ証券取引所に上場している企業株の内、浮動株調整時価総額と流動性の上位40銘柄から構成されている指標である。
アジアの市場には、香港の「ハンセン指数」、台湾の「加権」などの株式指数がある。香港ハンセン指数は、香港取引所上場の時価総額加重平均指数であり、ハンセン商工業株指数、 ハンセン金融株指数、ハンセン公益事業株指数、ハンセン不動産株指数の4つ業種別指数に分かれている。台湾の加権指数は、上場株式の発行額に応じて加重平均をした指数で、台湾証券取引所上場株式のすべてを含んでいる。
これ以外にも、株式指数は世界中に数多くあるため、全てを日々追っていくのは大変困難だ。自分がおもに投資している企業と関わりがある国の指標をいくつかピックアップして、市場の流れをつかんでいくのが良いだろう。
初心者の日経平均株価活用法
投資初心者にとって、今後の企業の成長性を予測し、個別株に投資するのはなかなか難しい。そこで、投資初心者でも価格の変動が分かりやすい、株式指数と連動して価格が動く商品をご紹介しよう。
日経225先物、日経225オプション
まずご紹介するのは、日経平均株価を利用した「日経225先物」や「日経225
オプション
」という商品である。日経225先物は、将来の日経平均株価を株式のように扱って、現在の市場価格で売買する取引のことだ。一方、日経225オプションも、日経平均株価を株式のように扱い、将来の一定期日(満期日)までに、取引時点で定める価格(権利行使価格)で売買できる権利を取引することである。両者とも、銘柄については、日経平均株価と連動して動くため、個別銘柄を指定する必要がなく分かりやすい。先物やオプションは、少額から大きな取引ができるが、リスクも高いので抵抗がある人もいるだろう。そんな方は、下で解説するETFやインデックスファンドから始めてみると良いだろう。
ETF、インデックスファンド
ETF とインデックスファンドは、日経平均株価やTOPIXの株価指数に連動すること目指した商品で、株のように個別に投資先の会社を選ぶ必要がない。例えば、日経平均連動型インデックスファンドの場合、日経平均株価が上がれば基準価格は上がり、日経平均株価が下がれば基準価額は下がる。ETFやインデックスファンドに投資することで、日経平均株価を構成する多くの銘柄に分散投資することができ、投資初心者でも始めやすい。ETFやインデックスファンドには、最低購入単位や売買手数料、配当金が再投資されるかどうかなどの点に違いがあるので、購入の際には各証券会社の商品性を見比べ、検討してほしい。
以上のように、日経平均株価やTOPIXなどの株価指数を知ることで、世界の市場動向が見えてくるだけではなく、様々な商品に投資する機会が広がる。これらの指標の情報を有効に活用して、今後の投資戦略に役立てていただきたい。
(ZUU online 編集部)