「原点」に立ち返るも客足は戻らず

そこで、今年3月に行われたワタミの「商品戦略発表会」において、新社長の清水邦晃氏は原点回帰を宣言した。

「2015年は、本当に居酒屋チェーンのど真ん中に立ち戻っていこうと思ってます。私たちが創業した時の思いは、居酒屋のシーンを楽しんでいただきたい。少しでも安く、少しでも美味しく。もう一度そのところに立ち戻って、そのニーズに徹底して応えていきたいと思ってます」とコメント、同時にメニュー改訂と10年ぶりの値下げを発表した。

また、「商品の見直しを一層行っております。アイテム数は絞り込み、食材数も少なくし、作業工程も減らしています。付加価値を高めるにあたって、食材数、作業工程、オペレーションを改善させるようなことをしてきました」と値下げにあたっての工夫について言及した。

具体的には、平均皿単価を現状の449円から401円に、客単価は2850円から2600円に下げる。また、オペレーション全体を見直し、生産と販売の一体化を図る。結果、平均仕込み時間は341分から223分に、食材品目数は355品から250品に減少する見通しだ。

だが、今のところ「原点回帰」効果は見えない。

6月9日、ワタミが発表した5月度の業績は散々なものだった。5月度の国内全店前期比実績は売上高89.7%、客数89.3%、客単価100.4%、国内既存店売上高前期比実績は89.2%。また2015年3月期の連結最終損益は128億円(前年度49億円)の赤字だった。

この業績悪化にともない、自己資本比率が7.4%、純資産が102億円と財務体質が急激に悪化しており、このままでは債務超過にも陥りかねない状況だ。5月に発表された2015年度の計画では、約100店舗を閉鎖した前年度に続き、85店舗の撤退を見込んでいる。