財政再建なくしても経済再生なし

財政再建を先送りし続ければ、国債の格下げが続くなど、いずれ日本経済が危機的な局面に陥るリスクは増大し続ける。高度経済成長期に設計された社会保障制度は、少子高齢化が進んだ現状において時代に即した形で改革を進めていくべきだろう。

現状は危機が迫っておらず先送りができるから、今やらないという選択ができるが、それは将来世代にツケをまわすだけだ。将来世代になればなるほど、財政の自由度は失われていく。過度な緊縮財政に気を配りながらも、財政再建、特に社会保障改革は進めなければならない。

今回の骨太における財政健全化に向けた内容は玉虫色とも言われるが、17年4月に消費税率の引き上げを控える中で経済情勢をみながらベストな選択を取れるのが理想的な政策運営ともいえる。しかし、歴史が語るように痛みを伴う改革は、先送りがつきものだ。

足元では安保関連法の審議などを背景に内閣支持率が低下している。来年の夏には参院選が控えるため、支持率低下を恐れて痛みを伴う改革が遠のく恐れがある。だからこそ骨太において歳出改革を約束する枠組みが設けられる必要があった。

「目安」と姿勢は示されたが、実行される約束はされていない。「経済再生なくして財政再建なし」はもっともだが、現在の日本おいては「財政再建なくしても将来世代の経済再生はない」ということも常に肝に銘じ、先送りしない政策運営が望まれる。

薮内哲
ニッセイ基礎研究所 経済研究部

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