株主優待を狙う投資ではどんな点に注意すべきか

前項でもご説明したように、株主優待は、近年メディアや書籍等でも取り上げられており、多くの投資家に浸透しつつあります。しかし、利用の方法を誤ると、思わぬ損失をこうむったり、そもそも優待を受けられなかったりするケースもあります。ここでは、株主優待にまつわる注意点を、改めて整理しておきたいと思います。

(A)権利付最終日前までに、対象銘柄を買い付けておく必要があること。(今回は8/26を権利付最終日とする銘柄が大多数)
(B)「権利付最終日」に向け株価は上昇しやすく、「権利落ち」以降は下落しやすい傾向があること。
(C)最近は「株主優待」人気で、一部の銘柄が割高な株価水準まで買われてしまっていること。
(D)業績の向上・悪化による株価の変動に注意すること。
(E)一層利益を増やしたいのであれば、配当の多寡についても十分検討すること。

ここで注意したいのは、(B)において、「権利付最終日」直前に買い、「権利落ち」直後に売却して、大きな損失を計上してしまった結果、せっかく株主優待で商品やサービス等をもらったのに、実質的には損の方が大きかったという例も少なくないことです。「株主優待」狙いと言えども、権利付・権利落ち前後の株価変動には注意したいところです。

なお、最近は(C)についても要注意です。当社WEBサイトの閲覧数のランキングでトップの吉野家は、今期予想営業利益が減益となっていることに加え、予想PERも116.8倍(7/28現在)となっていますので、やや割高感が強くなっています。また、第2位の大庄は、今期予想営業利益が黒字転換する見込みであるため、表1には掲載されましたが、予想PERが131.2倍(同)となっていますので、やはり、やや割高感が強くなってしまっています。

このように予想PERで100倍を超えているような銘柄は、株主優待銘柄として人気化し、業績面が多少無視されてしまっているケースもあるとみられ、一定の注意が必要と考えられます。

下の図1は、株主優待銘柄として人気の高いイオン(8267)について、2013年秋以降の株価推移をみたものです。同社は、2015/2期まで3期連続で営業減益となるなど、業績低迷に苦しみました。2014年は4月以降に消費税引き上げで消費低迷を余儀なくされ、小売株に逆風が吹いたこともあり、秋ごろまで株価が右肩下がりとなってしまいました。株価は株主優待の権利確定後に大きく下がる傾向になっていました。

しかし、2014年秋以降は、消費回復への期待が株価に追い風になります。2015/4/9に本決算を発表し、2016/2期の増益予想を公表した後は「悪材料出尽くし」となり、株価上昇は加速気味です。最近では6/30に日経新聞が第1四半期に大幅増益になるとの見通しを報じ、株価上昇が続きました。

このように、株主優待を狙う投資と言えども、投資環境や業績に対する配慮は必要です。前項で、厳選銘柄を選ぶ条件として「通期の会社予想営業利益を達成できる可能性が大きいとみられること」という条件を入れたのは、少なくとも、業績下方修正による株価下落を回避したいことが狙いになっています。

株主優待銘柄として人気のイオン