グラフ
(写真=Thinkstock/Getty Images)

これまでにコアCPI(前年比、消費税を除く)が国内の物価上昇圧力を示す総賃金前年比、海外からの物価上昇圧力を示す米国CPI前年比、そしてドル・円3年前比の動きでうまく説明できることを解説した。

コアCPI=-0.62+0.28 総賃金 +0.27 米国CPI +0.020 ドル円3年前比 + 1.13 アップダミー(誤差が1SD以上は1、1992・1993・2008・2009年)-0.78 ダウンダミー(誤差が-1SD以下は1、1988・1989・1990、2000・2001年・2015年)、R2= 0.96
米国CPI前年比が+2.5%程度、総賃金前年比が+3%程度、ドル・円3年前比が+50%程度(年率14%程度の円安)というかなり強い前提をおくと、コアCPI前年比が安定的に+2%程度で推移することになる。

日銀は「2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで」、マネタリーベースを「年間約80兆円」増加させるコミットメントを続けているが、その実現のハードルはかなり高い。

しかし、国内と海外からの物価上昇圧力がゼロで、ドル・円も変化しないときのコアCPI前年比の水準を意味するモデルの定数項は-0.62である。このマイナスの定数項は、日本経済に染み付いたデフレ期待と、これまでの抑制的な日銀の金融政策によるものであれば、アベノミクスによる変化で0%まで押し上げることも可能かもしれない。

フィリップスカーブの期待インフレ率上昇にともなう上方シフトであり、これが日銀の物価目標達成の理論的な裏づけとなっている。この上方シフトが起きれば、米国CPI前年比が+2.5%程度、総賃金前年比が+2.5%程度、ドル・円3年前比が+30%程度(年率9%程度の円安)で、コアCPI前年比が安定的に+2%程度で推移することになり、日銀の目標達成はより現実的となる。

このマイナスの定数項を、日本のCPIの下方バイアスとみて、上方シフトを統計的な改変で起こそうという動きもある。例えば、日本のCPIは家賃に品質調整がかかっておらず、建築年数の経過にともなう品質の劣化が考慮されず、帰属家賃を含め、下方バイアス(-0.2ppt)があるとされる。2016年に実施される5年ごとの基準改定で、このような下方バイアスが幾分修正されることを日銀も期待しているようだ。

しかし、この定数項の上方シフトは、あくまで期待インフレ率の上昇で起こすことが理論的で、デフレ完全脱却に必要なことである。現在のところ、これまでのモデルの枠組みで物価動向をうまく説明できているため、そのような理論的な上方シフトはまだ確認できていない。

賃金上昇が物価上昇につながり、それが賃金上昇を更に加速させる形にならなければ、日銀の目標である2%の安定的な物価上昇は困難であり、かなり時間がかかるだろう。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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