(写真=アスリートナレッジ編集部)
発足20年目を迎えたアメリカのメジャーリーグサッカー(Major League Soccer、以下MLS)が活況だ。1996年に10クラブで発足したMLSは、2015年時点で20クラブまで拡大、平均観客動員数は約1万9000人と世界8位まで伸ばした。クラブの資産価値も、今や200億円近くまで迫るクラブが出現した。過剰な支出を抑える一方で、ベッカムやアンリなどを筆頭とするビッグネームに対する投資も惜しまず、そしてそれらの投資はしっかりと回収している……。
選手のプレーや勝敗には、保証がない。ゆえに、仮に損をしてもチームの経営基盤が揺るがないような所まで構築する……MLSはこういうロジックで、わずか20年でここまでの成績を残した。その手腕はマーケティングの国・アメリカの面目躍如といったところだろう。それにしても、世界的にみて思うように動員を伸ばせるリーグばかりではない中で、20年でこれだけの成果を挙げるに至った道のりには、どのような必然があったのだろうか?
アメリカでは、当然ながら4大スポーツ(NFL、MLB、NBA、NHL)が大きく幅を利かせている。サッカー自体の競技人口は約2400万人と世界最大だが(ゆえに“隠れたサッカー大国"とも評される)、MLSにとって4大スポーツに割って入ることが容易ではないことは想像できるだろう。実際、すでにアメリカは一度「北米サッカーリーグ(NASL)」という苦い失敗経験を経ている。MLSは、そうした失敗をしっかり経験として活かし、ここまで成長してきたといえるのだ。
そこで今回は、MLSのアジア事業を一手に引き受ける中村武彦氏(LeadOff Sports Marketing)に近年のMLSの戦略について詳しくお話を伺った。中村さんは、2014年4月に放送されたテレビ東京系列『フットブレイン』、さらにBSジャパン『桑田式スポーツK営学』などのテレビ番組にも出演しており、そこで彼のことを知った日本のサッカーファンも多いのではないだろうか。今回は、アメリカのスポーツマーケティングまさに真っ只中にいる中村さんから貴重な知見を頂戴することができた。いずれも極めて濃い内容のため、4回に分けてお届けする。(取材・文:澤山大輔、横原義人[アスリートナレッジ編集部])