――なるほど、定量的に見積もる仕組みがベースにあるわけですね

中村 あるいは、どこかの家電メーカーがどこかのチームスポンサーをする際に、「小売店の良い棚を取りたい」という目的を持っていることがあります。コンビニでも、人目につく棚と全然そうじゃない棚ってありますよね。その良い棚を取るために、スポンサーをするということがあるのです。

どうやってスポンサードでそれを手にするかというと、小売店がいっぱいスポンサーしているイベントをスポンサードするわけです。そこで、クロスプロモーションになるんですけど、スポンサーする代わりに既存のスポンサーのキーパーソン全員を紹介して貰うパーティをしたり、スポンサー同士のミーティングを設定してもらったり。

実際にあった事例としては、北米の大手家電量販店がありまして、そこに電気機器メーカーがスポンサーするケースです。量販店はリーグスポンサーもやっているんですが、「良い陳列棚をもらいます、その代わり量販店さんがリーグに支払うお金を少し肩代わりします」と。量販店はスポンサーフィーが減り、店内の装飾代も減る。電気機器メーカーはリーグへのスポンサーフィーを少し肩代わりし、その代わり量販店の良い陳列棚が手に入る。こういう施策を『アクティベーション』というのですが、今のトレンドはチーム側とスポンサー側が話し合って、どうアクティベーションプランを構築するか話し合いをやります。

日本で言えば広告代理店さまがすることですけど、アメリカの場合はチームにサービス部というのがありまして、クライアントと一緒に話し合って決めるんですね。普通はセールス部が売ったらコミッションを貰えるのだと思いますが、サービス部は契約更新させたら、つまりスポンサーをハッピーにさせて「ぜひ来年もやらせてください」と言われたらコミッションがもらえる仕組みになっています。新しいお客様も大事ですけど、既存のお客様を太くするほうがコストもかからないですし。既存のお客様をどうやって太くして、もっと大きな収入源にするかというのがこちらの仕組みになっています。

――チームのサービス部というのは、フルコミッションになっているということですか?

中村 いや、営業部隊と一緒ですね。営業も基本給があって、コミッションがあってという感じです。

――成績を上げると、彼らの給料にも反映してくるということですね

中村 そうです。ただ日米の文化の差異もありますし、この施策をそのまま日本に導入すれば良いというわけではないです。例えば、契約書にサインした瞬間に「じゃあ、サービス部に引き継ぎます」って言うと「いやいや、君のことを気に入ったからスポンサーになったのに、その瞬間に担当が変わるとは何事だ」となってしまいます。日本にアメリカ流をそのまま持ちこむことは、なかなか難しいですね。あとは、そうすると給与体系として営業部隊は売ることにしか専念しなくなっちゃいます。売ったら「私はもういいや」となってしまうし、サービス部は「あいつら、売ったら任せっきりだ」となってうまくいかないんです。

なので、例えばだいたい一個のスポンサーにつきコミッション10%としますと、8%が売った人に行き、2%がサービス部に行くようにします。そうすると、新しく取ってくることに対するサービス部へのインセンティブもあり、売ったら売りっぱなしじゃなくて、更新をしたら8割がサービス部で2割がセールス部に行くようにします。恐らく、日本のスポーツのネクストフェーズは、どれだけフロントとスタッフにお金をかけていけるかではないかなと思っています。Jリーグが「人材が大事だ」と考え、『Jリーグ・ヒューマンキャピトルプロジェクト』を立ち上げたことは個人的にはすごく良いことだと思っています。(提供: アスリートナレッジ

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