Group of happy brazilian soccer fans.
(写真=Thinkstock/Getty Images)

中国不安から始まった世界的な株安は多くの新興国に深刻な影響を与えている。とりわけブラジルの通貨レアルが大きく下落している。8月28日における外国為替市場においてブラジルレアルは年初来19.8%下落しており、主要25通貨のなかで最も下落幅が大きい。背景にあるのは経済見通しの大幅な悪化や政治に対する不信感だ。


ブラジル投信を売りまくった証券会社と銀行

リーマンショックで多くの投資家が大きな損失を被り悲嘆に暮れていたとき、救世主となったのが新興国、高金利通貨、資源国だった。多くの新興国は今後人口が増加し、経済が成長する。そして経済成長に必要な資源を持っている。しかも新興国や資源国の金利は相対的に高かった。先進国の金融緩和によりあふれ出した投資マネーはこれらへ一斉になだれ込んだ。

そのひとつがブラジルだった。「ブラジルは豊富な資源を持っています。今後成長が見込め、サッカー・ワールドカップ(W杯)や五輪が開催予定であり、まだまだ発展の余地があります。しかも金利が高いので分配金もたくさん受け取れます」。多くの投資家がこうしたセールストークに何の疑いも持たず、ブラジルに大金を投じた。ブラジルについて、首都はどこか、公用語は何か、そんなごく基礎的な知識も持たないにもかかわらず、W杯と五輪という言葉が持つ甘い幻想に酔った。1964年、東京で五輪が開催され、日本が高度成長に沸き立った光景をそこに重ね合わせた。

証券会社や銀行の販売担当者にとってW杯や五輪といった国家的なイベントは最高のセールスポイントだった。もちろん、彼らもブラジルについての豊富な知識を持ち合わせていたわけではなく、結果として必要以上にW杯や五輪がセールストークに盛り込まれることとなった。


ブラジル経済の現状

あらためてブラジル経済の現状を確認してみよう。ブラジルでは現在、景気後退とインフレが同時進行するスタグフレーションが深刻化している。ルセフ政権が掲げた財政・金融の引き締めによる財政再建は成果が表れていないし、主要格付け機関がブラジル国債を投資不適格へと格下げする可能性もある。

マーケットはブラジルレアルの投機的水準への格下げを織り込む動きを見せており、すでに投機的水準にあるインドネシアやトルコ、さらにはロシアに並ぶほどリスクが高い通貨という認識が広まっている。

さらに国営石油会社ペトロブラスの汚職問題がルセフ政権に対する不信感を助長し経済政策運営は困難を極めている。また、総固定資本形成(投資)もGDP統計で5四半期連続マイナスとなっており、経済効果は期待できそうにない。


五輪という鬼門 東京もチャンス台無しに

では、2016年8月に開催されるリオ五輪はブラジル経済の救世主となり得るのか。
競技場や交通インフラの整備を含め、予算総額約は380億レアル(約1.3兆円)に上るとみられる。しかし、2014年のW杯では関連投資の達成率は7割弱にとどまったとされ、五輪関連投資についても、緊縮財政やペトロブラス汚職に関与した建設請負業者の経営不振の影響から一部は見送られる可能性がある。 つまり、五輪による経済の浮揚効果は期待できそうにない。

これはブラジルに限った話ではなさそうだ。2020年東京五輪は日本経済にとって大きなチャンスであると考えられてきた。しかし、現実を冷静に見るとどうだろう。国立競技場の白紙撤回問題に代表されるように責任の所在が明らかにされないまま無駄に税金が垂れ流され続けている。ロゴ問題で浮き彫りになったのは身内で固められた不透明で自浄能力のない委員会の運営体制だ。

アテネ五輪では多くの施設が使い道のないまま廃墟と化していることが伝えられている。ブラジルでも五輪が経済に貢献できそうにはない。そして東京も無責任な隠ぺい体質が景気浮揚のチャンスを台無しにしてしまう可能性が高い。投資家には販売者のセールストークを鵜呑みにしない冷静な判断力が必要となる。(ZUU online 編集部)

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