CDCとはどのようなものか

図表2は日本年金数理人会の資料をもとにオランダのCDCの特徴を整理したものです。この特徴<1>から明らかなように、加入者の立場からすればDBとの違いはありません。また、年金制度の監督ルール上もDBとして扱われます。オランダのDBには厳格な積立水準のルールが適用されますが、CDCにも同様の積立水準が求められています。

図表2 CDCの特徴

その一方で、企業が負担する掛け金が5年以上の期間にわたって固定されることを条件に、企業会計上はDCとして扱うことができます。これにより最低5年間は追加掛け金の責任がなくなり、企業は財務の安定性を確保するとともに信用格付けなどの面でもメリットを得ることができます(iii)。

もし掛け金が固定されている間に年金の運用がうまく行かなければ、最悪の場合には<4>のように年金の減額も可能になっています。これは加入者からすればかなり不利な条件にみえます。それにもかかわらず、このCDCの仕組みを加入者が受け入れたのは何故でしょうか。

2004年から2005年当時にCDCへの移行を決めた企業への調査結果をみると、(1)企業が負担する掛け金率の引き上げ、(2)一時的な追加拠出や劣後ローンの提供、(3)固定期間終了時における掛け金水準の見直し、といった条件を企業側が受け入れたからだということが分かります(図表3)。

図表3 CDC移行時の企業負担(例)

また、同じ調査に基づいた分析によれば、CDCへの移行を決めた例に共通の特徴として、企業規模に対して年金資産の規模が大きいことが言えるとのことです。職域年金が充実して資産規模が大きくなっていた分、企業にとっては制度維持にともなうリスクが大きかったということではないでしょうか。

以上の通り、CDCは企業会計基準の変更を控えた一部の企業が、財務の安定性を求めて踏み切ったのものだと考えることができます。しかし、企業が財務の安定性を求めるのであれば、CDCではなく、もっと負担の軽い通常のDCでも良かったはずです。

しかし、オランダの職域年金においては組合に代表される加入者の発言力が強く、企業は業績安定という目的を果たすと同時に、加入者の同意も得やすい仕組みとして、CDCに注目した訳です。