加入者数では今もDBが柱

企業会計基準の変更が契機となってCDCが導入された当時、オランダでは多くの企業別年金がDBからCDCへ移行するのではないかと予想されていました。しかし、実際はそうならなかったようです。

年金コンサルティング会社であるTowersWatson社が2013年に行ったアンケートの結果によると、オランダの年金基金のうちCDCを採用している比率は一割程度(iv)ではないかとしています。

図表4はオランダの中央銀行が発表している年金基金数の推移ですが、仮に2013年時点での年金基金総数約600から計算すると、CDCの数はおよそ60程度ということになります。当初の予想と比べると、この数字はかなり低いと思います。その理由として考えられるのがCDCへの移行時の負担です。

図表4 オランダの職域年金基金数の推移

2004年から2005年にかけて企業別年金がCDCへ移行した際に、企業は掛け金率の引き上げ等の条件を受け入れている訳ですが、全ての企業がこうした経済的な負担に耐えられる訳ではありません。特に2007年以降のリーマンショック等、金融市場の混乱により、CDCへの移行にはブレーキがかかったのではないでしょうか。

なお、産業別年金でもCDCへの移行は若干あったようです。ただ、大半の場合には利害関係者の多数さや、財務体力のある雇用主ばかりではないことから、追加負担の議論を進めることが難しかったのではないかと思います(v)。

一方、同じ時点でDCを採用している年金基金の数を見るとやはり60程度です。その水準は2000年頃とあまり大きな変化はありません。従って、この10年間を振り返ると、依然として伝統的なDBが中心的存在であったと見ることができます。

その中でもABPとPFZWという二つの産業別年金の加入者が圧倒的に多く、両者がDBに制度としての存在感を与えています。しかし、実はこの大きな存在である産業別年金をめぐる2000年代の環境の厳しさが、後のDAの議論につながって行きます。そこで、2000年以降にオランダのDBがどのように変化していったかを確認しておきたいと思います。