(写真=HPより)
「今後2年間というスケールで、英国の経済成長におけるリスクとインフレのバランスを見ると、非常に好ましくない方向に偏っています」と警告するのは、英中央銀行(BOE)のチーフエコノミスト、アンディー・ホールデン氏だ。
ホールデン氏は「下振れ対策として英中央銀行が導入するべきなのは、利率の引き上げではなくマイナス金利政策なのです」と提案している。
英国のインフレターゲットは4%にすべき
インフレが予想される場合、各国の中央銀行は利率を引き上げて、銀行の金利が上昇するように誘導する。主な狙いは消費の減少に伴う物価の引き下げだ。利率をマイナスまで引き下げてしまうと、不安に駆られた人々が銀行預金を引き出し、現金として手元に保管しようとする動きが出る。長期的に見た場合、経済成長を失速させる原因になるからだ。
しかしホールデン氏は、ここで敢えて経済政策の手綱をゆるめるべきだと主張する。
英テレグラフ紙の報道によると、ホールデン氏は「現在の英国のインフレターゲット(2%)は、銀行の利率が6%だった時代に設定された」ことを指摘し、「利率が0.5まで落ち込んだ今、目標を4%に引き上るべきだ」と画期的な打開策を提案している。
たしかに英国ではここ6年間、銀行の利率が0.5%から微動していない。また中国のバブル崩壊と米ゼロ金利政策解除の延期などの影響で、検討されていた利率の引き上げは少なくとも来年11月まで延期になるという。
BOE総裁の立場とは対立 国民が支持するのはどちらか?
新興マーケットにおける成長の失速、投資の弱化、増長する格差、高齢化社会、貯蓄過剰などが、低利率現象の原因として挙げられているが、ホールデン氏は「これらが早期改善される見込みはない」と言う。
「前世代とは違って、このような状況では金融政策の余地がありません。2%程度のインフレ目標では不十分かも知れませんが、4%なら十分な効果を得る余地があるでしょう」
こうしたホールデン氏の意見は、マーク・カーニー英中央銀行総裁の「過去の実例から見て、高インフレの影響で最も苦しむのは、蓄えのない低所得者と高齢者だ」というコメントと対立する。
ホールデン氏は、カーニー英中央銀行総裁の懸念に全面的には同意しないという姿勢を示す一方で、「インフレ目標が現在の2%を超えれば、英中央銀行が経済リスクを抱えるだけではなく、銀行自体の信用にも関わってきますし、国民も目標が低い方が安心しますからね」と、自らの過激とも思える提案が、銀行や国民に受け入れらる可能性は低いと認めている。
「しかし中国やギリシャの経済崩壊を人事のように考えていては、自国の経済成長は望めません」
蓄積しつつある経済リスクのバランスを調節して、長期的に英国の経済を下支えするためには、ホールデン氏の提案に従って強硬手段にでる時期なのだろうか。
テレグラフ紙が実施したデジタル世論調査では、およそ半数の国民が現インフレ目標を支持(45%)、インフレ目標自体を廃止すればよいという声が32%、ホールデン氏の提案を支持する人々は24%という結果だ。 (ZUU online 編集部)
【関連記事】
・渋谷の隣駅にあるラーメン店に「外国人観光客」が集う意外な理由
・11月4日上場へ!日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の上場を徹底解剖
・日本人大富豪ランキング トップ20の顔ぶれはこれだ!
・日経新聞/日経MJから、四季報まで全てネットで閲覧可?その意外な方法とは
・証券業界に革命?「独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)」に注目が集まる理由