(写真=HPより)
2014年10月、弱冠22歳の起業家、ハイチュワン・テン氏が姿を消した事件が中国全土で話題になった。テン氏は16歳で高校中退後、2014年にテクノロジービジネスを立ち上げ、ソーシャルレンディング会社BoliyaのCEOとして一躍脚光を浴びた。しかし昨年以来1100万ドルの負債を残したまま消息を絶っている。
ソーシャルレンディングが中国市場を救う?
常識を超えた独自の株価下落阻止策で必死の回復を図っている中国で注目されているのが「ソーシャルレンディング」(オンライン消費者金融サービス)だ。
中国では現在、約7億4000万人が日常的にデジタルバンキングやレンディング利用している。そこに経済成長の可能性を見出したテンセントやアリババグループなど既存のテクノロジー企業は、「P2P」(ピアツーピア)と呼ばれる技術を使ったソーシャルレンディングに力を入れている。
ソーシャルレンディングを簡単に説明すると、消費者(借り手)と融資者(貸し手)をお互いの条件に基づいてマッチングさせる仲介サービス。すべての手続きはインターネット上で行われる。借り手、貸し手ともに、お互いにとって最も都合の良い交渉相手を見つけやすいという点が最大のメリットだ。しかし返済が滞ったなどの交渉後のトラブルは両者間で解決しなければならないなど、デメリットもある。
現金のある中流階級が投資手段として利用
中国のソーシャルレンディング情報サイトWangdaizhijiaの報告によると、中国における2015 年度上半期のP2Pグロス取引高は470億ドルと、前年から既に79億ドル近く増加している。さらに今年の終盤には1256億ドルにまで膨れあがると見込まれている。また6月末の時点でソーシャルレンディングの契約件数は2000件をこえており、前年から29%も上昇していることになる。
最大のソーシャルレンディングサービスTongbanjieの月間利用者は300万人を超えている。これほどまでにインターネット消費者金融サービスの利用が増えた理由として、中国におけるここ20年間の「貸し渋り」が挙げられる。
担保を提供できない消費者や小企業などは、銀行から融資を受けることは非常に難しく、これらの借り手はソーシャルレンディングに頼るしかない現状だ。また現金を貯めている中流階層にとっては絶好の「お気軽投資」として人気が高い。
現在これだけの人気を誇るとはいえ、今後も成長し続けるとは限らない。ソーシャルレンディングと一部同じ理由で支持されていたビットコインも規制され、既に最大手の取引所が人民元の受け入れを停止している。ソーシャルレンディングのここまでの成長をみて、政府が何の介入もしないとも言い切れない。
冒頭で紹介したテン氏はいまだ見つかっていない。彼の急すぎた成功と没落は、インターネット金融という成長株を利用した「中国の西部開拓」の失敗と、またもや弾けかねないバブルの象徴とはいえないだろうか。 (ZUU online 編集部)
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