事業主のチェックポイント

マイナンバーが始まることで、税金や社会保険の不正はこれまで以上にスピーディに、かつ多く発見されるだろう。故意または過失にかかわらず、税務当局や年金機構に目をつけられることは、事業主にとっては避けたいところだ。一度不正が発覚すれば、過去数年の申告書などをチェックされ、本税のみならず、無申告加算税や過少申告加算税、延滞税などの罰金が徴収される。それだけではない。ブラックリストに事業者名が記載され、頻繁に調査を受ける可能性も高くなる。そうなった場合、単におカネだけの問題ではなく、経営や信用にまで影響が及ぶことになる。

そうならないためにも、今から次のような点に注意しておくべきだろう。

①脱税行為はやめる

無申告や過少申告は、これまで以上に簡単に把握されるようになる。これまで見逃されてきたとしても、それは単に運がよかっただけだ。事業を大事に思うならば、今からでも適正に申告を行うべきだ。過去をさかのぼってチェックされることを心配するならば、修正申告を行って対処しておく必要がある。

②適正な節税と健全な経営のために勉強する、あるいは専門家に相談する

不正行為を行っていた理由として最も多いのが「資金繰りに対する不安」だろう。「明日の支払いがうまくいくか」「税金でもっていかれるのはもったいない」「より多くおカネを手元に残して事業の投資に回したい」……それが不正行為の根本にあるのかもしれない。

ただ、いかなる理由であれ、不正行為をしている限り、どこか後ろめたさがつきまとうはずだ。後ろめたさがつきまとう経営は、遅かれ早かれ行き詰まるし、成長は見込めない。それよりも、きちんと法律を遵守しても、10年後も事業しているためにはどうしたらいいかを考えるほうが建設的だ。そのために、税金や社会保険についてきちんと勉強するなり、あるいは専門家の手を借りるなりするほうが得策だといえる。

口座との紐付けで一層バレやすく

「マイナンバーは当面行政機関での活用しか考えていない」といわれている。しかし、2018年には、銀行や証券会社など金融機関での口座開設においてはマイナンバーの提示が義務化される見込みだ。各金融機関ではすでにそのためのシステム作りが着々と行われている。もし、金融機関の口座とマイナンバーが紐づけされれば、売り上げのごまかしや経費の架空計上、隠し口座などはすぐにバレてしまうことになるに違いない。

バレる不安に翻弄されるのはエネルギーの無駄遣いでしかない。同じエネルギーを使うなら適正に対処する方が建設的である。

鈴木 まゆ子(すずき まゆこ)税理士
鈴木まゆ子事務所代表。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。ドン・キホーテ勤務中に会計に興味を持ち会計事務所に転職する。妊娠・出産・育児をしながら税理士試験の受験勉強を続け09年に合格。12年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を行う行政書士の夫とともに外国人の決算・申告・コンサルティングに従事。14年から国際相続などを中心に解説記事作成業務を行っている。8歳、5歳、2歳の三姉妹の母。

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