減速が続く世界経済

◆世界経済は新興国中心に下振れ

世界経済は中国をはじめとした新興国を中心に減速基調を強めている。米国、ユーロ圏などの先進国は比較的堅調に推移しているが、中国が工業部門を中心に減速しているほか、中国経済減速に伴う輸出の不振などからアジア新興国も成長率が低下している。また、ブラジル、ロシアなどの資源国では原油をはじめとした国際商品市況下落の影響から景気が悪化している。

IMFの世界経済見通しでは、世界経済の成長率予想の下方修正が繰り返されている。たとえば、2015年の成長率見通しは2014年1月時点の3.9%から、2015年10月に公表された最新見通しでは3.1%まで下方修正されている。特に目立つのが新興国の急減速と見通しの下方修正幅の大きさだ。

新興国経済の成長率はリーマン・ショックから持ち直した2010年には7%台まで高まったが、その後大幅に減速し2014年には4.6%となった。さらに、2015年の成長率見通しは2014年1月時点では5.4%だったが、最新見通しでは4.0%まで下方修正されている。一方、先進国はユーロ圏がマイナス成長となった2013年の1%台前半から2014年が1%後半、2015年が2%と徐々に持ち直している。

中期経済見通し2

◆(新興国は相対的に高い成長を維持するが、伸び率は徐々に低下

これまで新興国は世界経済の牽引役となってきた。世界経済に占める新興国の割合(ドルベース)は2000年の20%程度から一貫して上昇を続け2014年には39%となった。しかし、2015年はドル高の進行によって米国のウェイトが急速に高まる一方、新興国は現地通貨ベースの成長率の減速に加え為替が対ドルで大きく減価したため、世界経済に占める割合は低下することが見込まれる。

先行きは新興国が相対的に先進国よりも高い成長を続けること、ドル高が一服することから新興国のウェイトは再び上昇傾向となり、世界経済に占める新興国の割合は今回の予測期間末である2025年には45%まで高まるだろう。

国別には昨年度までは10年後には中国が米国を抜いて世界一の経済大国になると予想していたが、足もとのドル高、先行きの中国経済の成長率鈍化を見込み、10年後も米国が世界一の経済規模を維持するという見通しに変更した。一方、現時点では経済規模が日本の3分の1程度にすぎないインドはすでに人口が日本の約10倍となっていることに加え、先行きの人口増加率も日本を大きく上回ることから、予測期間末には日本のGDPを上回ることが予想される。

中期経済見通し3

新興国は先進国との比較では高成長を維持するものの、伸び率は徐々に鈍化していくことが避けられないだろう。潜在成長率を大きく左右する生産年齢人口(15~64歳)は先進国がすでに減少に転じている一方で、新興国は1%台半ばの伸びを維持している。

しかし、中国が「一人っ子政策」の影響から2015年前後をピークに減少に転じることもあり、新興国全体の生産年齢人口も2050年には0%台前半まで低下することが予想されている(国連推計による)。このため、新興国の潜在成長率も先行きは徐々に低下していくことが見込まれる。

2012年以降3%台の成長が続いている世界経済は景気の持ち直しに伴い2020年にかけていったん4%程度まで回復するが、潜在成長率の低下に応じて2025年にかけて3%台半ばまで成長率が鈍化するだろう。

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