ゆう活
(写真=HPより)

政府が必死に旗を振った「ゆう活」(ゆうやけ時間活動推進)。夏季を中心に、夕方の勤務時間を早めに切り上げようというものだ。国家公務員22万人を対象に7-8月、始業時間を1-2時間早めて行われたものの、民間では広まっている様子はない。


賛否別れる「ゆう活」

ゆう活の良い点として、「通勤ラッシュが避けられる」「夕方の時間でプライベートを充実させられる」「夫婦間で家事・育児が分担できる」といったものがある。

政府は「仕事への意欲が高まる」「資格取得など能力向上につながる」「労働生産性の向上につながる」などの利点を訴える。

たとえば伊藤忠商事 <8001> では2014年5月から朝型勤務制度を正式導入している。「深夜勤務の禁止」「20時~22時勤務の原則禁止」「早朝勤務時間に割増し賃金支給」などの制度を導入した結果、前年度約30%だった20時以降の退館者が約7%にまで減少するといった効果がみられた。

しかし、「朝早く勤務を始めても夕方終われないので、長時間労働が助長される」という声や、「早起きや睡眠不足に関する問題」、利点とは逆に「家事や育児に支障が出る」という意見もある。最後の意見については、具体的には「子どもを預けたくても早朝は保育園が開いていない」「子どもを早起きさせなければならない」「朝の家事時間がもてなくなった」――というものだ。


朝型勤務を一度導入して止めた企業も

実際に朝型勤務を導入し、その後、制度を見直した企業がある。カルビー <2229> では2013年12月、夏季を「サマータイム」、冬季を「アーリータイム」として早朝時間を利用した効率的な働き方に転換する仕組みを導入した。

しかし、「サマータイムの導入によって残業時間が増える」「主婦は朝が忙しいため、出社時刻が早まるのは生活に支障が出る」といった反対意見が多く、社員一律での朝型勤務を見直した。

ただし、カルビーではその後も従業員の生活を重視した制度づくりに努めている。一律での朝型勤務は見直しながらも、サマータイムの実施と合わせて学びの機会を提供するなど、柔軟な働き方を可能にするためのライフワークバランスの支援に力を入れているそうだ。


サマータイムとの類似性と問題点

朝型勤務はサマータイムによく似ている。現在、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ各国など世界約70カ国で実施されているサマータイムだが、メリットだけでなくデメリットについて語られることも多い。

たとえばアメリカでは、「デイライト・セービング・タイム」(夏時間)が始まった最初の月曜日に交通事故が急増する傾向がある」「最初の週は心臓発作も増加する」という報告があるという。真偽は明確ではないが、睡眠不足による体調不良や事故の増加は懸念されるところだ。

ワーク・ライフ・バランスの向上のために政府や企業があらゆる仕組みを取り入れることの重要性や意義は分かる。だが現状では残念ながら、時短勤務や育児・介護などを目的とした早退などを許さない現場、部下の多様な働き方を許容しない中間管理職が幅を利かせている。多様な働き方を認めず、長時間労働を美徳とする環境を変えるのには、まだまだ時間がかかりそうだ。(ZUU online 編集部)

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