世界経済を牽引しているのはやはり米国であり、米国経済を牽引しているのはルー国務長官ならびにイエレン議長をはじめとするFRBのメンバーである。為替についてはルー国務長官、金利についてはFRBが発言力を持っている。今回はその中でも特に注目すべき5名の要人について紹介する。


①”ジャック”ジェイコブ・ジョセフ・ルー(Jacob Joseph "Jack" Lew)

米国の財務長官。オバマ大統領より「カメラよりも政策の専門家に囲まれていることを好む地味な男」であると言われるほどにパフォーマンスを嫌う実務家である。就任の際にはサインの汚さで世界を賑わせた。

米国だけでは世界経済のエンジンにはなりえないとして、日本に対しては消費税問題、中国に対しては経済改革・人民元引き下げについて度々コメントを出している。

他国の政策に対する発言ということで、「注視している」や「失望・期待している」といった言い方が多いが、人民元引き下げの際には中国に対して怒りをあらわにし、「引き下げについて説明をさせる」といった語気の強い言葉も目立つ。彼が言うことは米国政府の意見である。

特に米ドルについては大きな影響を持つため、発言の真意をしっかりと押さえ、米国はルー氏を通じて何を伝えようとしているのかを感じ取っていかなければならない。


②ジャネット・ルイス・イエレン(Janet Louise Yellen)

第15代連邦準備制度理事会(FRB)の女性初の議長である。連邦公開市場委員会(FOMC)の委員長も兼ねている。彼女はFRBの目的である雇用の最大化と物価の安定のうち、雇用の最大化を重視しており、金利の上昇を好まず金融緩和の停止を安易には判断すべきではないと主張しているハト派である。

だが、データに裏づけされた経済予想の分析力と、一時的な株価の変動に影響されない振れない姿勢には支持が高い。ブルームバーグ社の「2015年に世界で金利に影響を与える50人」の1位にも選出され世界中からその発言が注目される要人だ。

この9月においては彼女は2015年のうちには利上げをしなくてはならないと明言しており、イエレン氏がいつ利上げを決めるかが注目されている。彼女が利上げを決定した時こそ、真に米国経済、そして世界経済が復活した時だと言えるであろう。


③ウィリアム・C・ダドリー(William C. Dudley)

第10代ニューヨーク連邦準備銀行総裁であり、連邦公開市場委員会(FOMC)の副委員長である。20年近くゴールドマンサックスでエコノミストとして活躍し、2008年のリーマンショックでは民間の経験を活かしながらリーマンブラザーズやベアスターンズなどの処理を陣頭指揮した。

その経歴とニューヨーク連銀総裁という立場から、彼の発言はウォールストリートの意見の代弁だと言われている。特にこの9月の株価は、8月のダドリーによる「9月に開かれる連邦公開市場委員会で基準金利の正常化開始を決めることは説得力が落ちる。だが、会議が開かれる時に米国経済と世界の金融市場の展開によっては正常化論が力を得ることもある」という発言によって大きく変動した。

この発言は当初は9月の金利引き上げ見送りと受け取られた。しかし、その後に米国経済の成長率改善が発表されると9月に金利引き上げが行われるのではないか、との見解が広がり相場が大きく変動する要因となった。今後も市場を大きく動かす彼の発言とその真意について注視していかなければならない。


④ジェフリー・M・ラッカー(Jeffrey M. Lacker)

第7代リッチモンド連邦準備銀行総裁であり、連邦公開市場委員会の委員も兼ねている。タカ派で知られており、既に米国は雇用が回復している以上、政府主導による雇用創出は景気過熱リスクをもたらすとして金利引き上げを主張している。

ジェフリー氏は、10月27日・28日に開催されるFOMC会合において、金利引き上げが行われる可能性が高いと発言。仮に利上げが行われなかった場合には、1998年のITバブルの様なバブルの再発可能性があると警鐘を鳴らしている。すでに米国は低金利による過剰金融、バブル発生のリスクに注意しなければならない段階に入ったとの立場だ。いまだ中国および米国経済の不安定さが指摘される中で、果たしてジェフリーの発言通り、10月に金利引き上げが行われるのかが注目されている。


⑤ナラヤナ・コチャラコタ(Narayana Kocherlakota)

第12代ミネアポリス連邦準備銀行総裁である。連邦公開市場委員会には参加しており発言権はあるが、委員ではないため議決権は無い。超ハト派と言われている。今回の雇用統計でも雇用者数の伸びが弱かった事から、現在の金融政策が引き締め状態にあり、更なる緩和が必要だと主張。より金利を引き下げること、もしくは即時のマイナス金利の導入を求めている。

たしかにここ数年、ドラギ総裁率いる欧州中央銀行(ECB)やスイス国立銀行などがマイナス金利を導入し、成果を上げている事は事実である。また、米国外の景気悪化による輸出軟調による雇用の伸びの鈍化は、コチャラコタ総裁の過去の発言に対する裏打ちともなっているため一定の支持者が存在している。この5名の中では世界経済に対してもっとも悲観的な立場であると言える。

彼ら5名は皆立場や考え方が異なっているが、いずれも世界経済に対する多大な発言力・影響力を持っている。その発言に耳を傾けながら、今後の世界経済がどのように動いていくのか注目していきたい。(ZUU online 編集部)

【関連記事】
・公務員の優遇なくなる?「共済年金」「厚生年金」一元化の意味
・11月4日上場へ!日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の上場を徹底解剖
・日本人大富豪ランキング トップ20の顔ぶれはこれだ!
・日経新聞/日経MJから、四季報まで全てネットで閲覧可?その意外な方法とは
・証券業界に革命?「独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)」に注目が集まる理由