大阪オフィス市場
(写真=PIXTA)


はじめに

大阪のオフィス市場は需要の増加により空室率の低下が続いている。一方、エリア別には淀屋橋・本町、心斎橋・難波地区で空室率の上昇が見られる。募集賃料も底ばいが続いており、規模や立地による二極化は解消には至っていない。

今後の新規供給が少ないため中期的には市況改善が期待できるが、2015年は自社ビルの竣工が続き、賃貸ビルから自社ビルへの転出が進んだため、11月以降、淀屋橋・本町地区を中心にいったん空室率の上昇が予想される。

本稿では、最近の大阪のオフィス市況の動向を空室率や需要の変化を中心にとりまとめるとともに、2021年までの賃料予測を行う。(*1)


大阪のオフィス空室率・賃料動向

大阪のオフィス空室率は他の主要都市と同様、改善が続いている(図表-1)。

2013年にはグランフロント大阪とダイビル本館の竣工に伴い空室率は大きく上昇したが、その後、低下傾向にある。2015年10月の空室率は8.74%であり、リーマンショック後のピーク(13.20%)からの低下傾向に変化はない。成約賃料は2013年から2014年にかけて横ばいで推移してきたが、2015年上期に前期比で8%を上回る上昇となった(図表-2)。

大阪オフィス市場 図1-2

最近の底値である2012年下期と比べると28%の上昇で、ファンドバブル時のピークの77%の水準にまで回復してきた。成約賃料が上昇傾向にある一方、募集賃料は底ばいの状態が続いている(図表-3)。

月次で見ると、募集賃料は2014年8月を底にわずかではあるが上昇をうかがう状況にある(図表-4)。この間に新ダイビルと梅田清和ビルの竣工に伴う空室率の上昇があったが、募集賃料の底ばいの中でのわずかな上昇傾向に大きな変化はなく(*2)、市況改善への動きは続いている(図表-5)。

規模別にみると、最近の空室率は大規模ビルと小型ビル(*3)で改善が進み、大型ビルと中型ビルの改善はわずかにとどまっている(図表-6)。なお、長期的にみると、大規模ビルと大型ビルがファンドバブル期(2005~08年)の空室率の最低値を上回るのに対し、中型ビルと小型ビルでは当時の最低値とほぼ同等か下回る水準となっている。

大阪オフィス市場 図3-6

ザイマックスによると大阪市内オフィスビルの賃貸面積は270万坪あり、このうち中小ビル(*4)が48%、大規模ビルが52%を占めている(図表-7)。築20年未満のビルは中小ビルで21万坪、大規模で56万坪あるため、大阪市内の築20年未満のオフィスビルのうち中小ビルは27%にすぎない。このように、中小ビルは大規模ビルに比べ相対的に築年が古いため、テナントがBCPを重視したオフィス選びを重視する中で、今後の空室率の低下に課題が残る。

大阪オフィス市場 図7