大阪のオフィス需給と地区別動向
三鬼商事によると、現在、大阪ビジネス地区(*5)の賃貸可能面積は220万坪、空室面積は17.9万坪である(図表-8)。空室面積は直近のピークから▲7.4万坪(▲29.0%)の減少となっている。空室面積は順調に減少しているが、ファンドバブル期の2007年末と比べると1.9倍の水準であり、現時点では需給が逼迫している状況にあるとはいえない。
2015年は新ダイビルや梅田清和ビル、HK淀屋橋ガーデンアベニューなどの竣工があった。2014年に続き供給は比較的低水準で、今後も新規供給圧力は低い状況が続くと考えられる(図表-9)。新規供給が少ない中、大阪ビジネス地区では5年連続で賃貸面積は増加が続くなど、大規模ビルを中心に需要は堅調に増加している(*6)。
ただ、2015年の需要増加は供給増加に届かず、現時点では空室面積が昨年末より増加し空室率は悪化した状況にある(図表-10)。大阪ビジネス地区では2015年に入り、梅田地区で空室が減少する(▲4千坪の減少)一方、淀屋橋・本町地区(+1万1千坪の増加)や心斎橋・難波地区(+3千坪の増加)では他地区への移転などにより空室が増加している(*7)(図表-11)。
地区別の需給の偏りを反映し、梅田地区で空室率が低下(昨年末7.45%→2015年9月6.76%)する一方、淀屋橋・本町地区(同7.92%→9.37%)や心斎橋・難波地区(同5.74%→8.77%)では空室率の大幅な上昇が見られた(図表-12、13)。募集賃料も、梅田地区で昨年末から上昇が見られる一方、淀屋橋・本町地区では横ばい、心斎橋・難波地区では低下傾向が続いている(図表-14)。
2015年は自社ビルの供給が目立った。日本生命本店東館や田辺三菱製薬本社ビル、阪和興業本社新ビル(HK淀屋橋ガーデンアベニュー)、KDDI大阪第二ビルなどであり、これらの企業が入居していた賃貸ビルからの転出が進んでいる。自社ビル完成に伴う賃貸ビル市場での空室増加は約1万5千坪といわれており、空室の募集が本格化する11月以降、淀屋橋・本町を中心に一時的に空室率が上昇することが考えられる。
ただし、2016年に大規模供給が予定されていないことと、堅調な需要(*8)やビルの立地の良さなどのため空室はしだいに減少していくと予想される。