金融政策:追加緩和完全スルー、それでも追加緩和ありと信じる理由

日銀は10月末の金融政策決定会合において追加緩和を見送った。同時に、物価安定目標の達成時期を従来の「16年度前半頃」から「16年度後半頃」へと約半年後ろ倒しにした。今回は、消費者物価上昇率の低迷や内外経済の下振れを受けて、事前の期待が高まっていた中での完全なゼロ回答となった。

具体的な追加緩和の提案すらなかったとのことで、政策の見通しが一層不透明になった感があるが、逆に今回の会合を経て明らかになった点も存在する。改めて、今後の追加緩和の可能性を考えてみたい。

◆動かない日銀ではなく、容易に動けない日銀

まず、今回の緩和見送りの評価であるが、筆者はもともと10月末緩和には懐疑的であった。その最大の理由は、日銀の追加緩和余地があまりないとみられるためだ。現行の質的・量的緩和の主力は大規模な国債買入れだが、既にその継続可能性には疑問を持たれている。これ以上、大幅に国債買入れ額を増額すると、単に継続可能期間を短縮することになりかねない。

ETFの買入れ増額は可能とみるが、それだけでは市場の失望を買いそうだ。付利の引き下げは有効な手段と考えるが、再び金利目標に戻る印象を与えるため、従来のマネタリーベース目標を自ら否定することにもつながりかねず、これまでの緩和手段である買入れ規模の拡大よりもハードルは高めだ。現在はまだ、「物価の基調は改善」という主張でしのぐことが可能であることから、そこまで踏み込むとは見ていなかった。

◆達成時期のさらなる後ろ倒しはリスクを伴う

今回、物価目標の達成時期を約半年後ろ倒しにしたことで、時間的猶予は出来た形だが、それでも「16年度後半に物価上昇率2%達成」は非常に楽観的だ。弊社も含めた予測機関は16年度後半の2%達成に懐疑的だ。日本経済研究センターが取りまとめている「ESPフォーキャスト」(10月調査)におけるコアCPI上昇率の見通しは、41機関の平均で1.1~1.2%台に留まっている。

物価目標の期限内達成が危ぶまれたとき、日銀がさらに達成時期を後ろ倒しすることは可能ではあるが、これまでよりもリスクを伴う。それは17年4月に消費税率引き上げが予定されているためだ。まだ、実施されると完全に決まったわけではないが、17年4月の引き上げを前提とすると、17年度の前半は消費税率引き上げ直後にあたり、景気に逆風が吹く。

そうした時期に物価上昇率(消費税の影響除き)が上昇幅を広げ、2%を達成するというのは無理があるため、後ろ倒しするとすれば、「17年度後半」もしくは「18年度」とするのが自然だろう。そうなると今度は物価目標を「できるだけ早期に」達成するとした13年のコミットメントが完全に形骸化する恐れがある。

金融市場の動き2

さらに、その際、今年の4月や10月のように「原油価格低迷」という不可抗力の影響を主張できる状況であればまだ良いが、そうでなければ従来の政策効果を否定することにも繋がる。従って、さらなる後ろ倒しの前に、もう一度追加緩和というチャレンジを試みると予想する。