時期としては、1月の展望レポート発表時には、これまで日銀がより所としてきた「物価の基調改善」が変調するリスクが高まり、追加緩和の条件が整うと見ている。その意味では、1月29日、4月28日、7月29日は全てに可能性があることになるが、4月28日は政治的要因からやや可能性が低いと見ている。
円安による物価上昇をもたらしかねない追加緩和は家計の負担感を増幅させる可能性があるため、参議院選を7月に控えた政治からの反発が予想されるためだ。残りの1月29日と7月29日では、今のところ、前者の方がより可能性が高いと見ている。その理由は「賃上げ」だ。
10月末の総裁会見において、黒田総裁は、物価の持続的な上昇のためには、賃上げなど経済全体のバランスが重要との主張を繰り返すとともに、現在の賃上げ状況に関しては労働市場や企業収益からすると不十分との認識を示した。
賃金の伸びが限定的な中で物価が上昇し、実質賃金が伸び悩むと、結果として家計の消費行動に悪影響が出る事態に対して、日銀は警戒を強めているようだ。その意味において、来年の春闘でどれだけ賃上げが進むか?は極めて重要になる。もし、賃上げがたいして進まなければ、来年度も家計は物価上昇に耐えられなくなるためだ。一方で企業の立場からすると、内外の経済環境と見通しは今年の春闘時と比べて悪化している。
しかも、現在の過去最高水準の企業収益を支える円安は、既述のとおり既にほぼ一巡しつつある。そこで、2月頃から本格化する労使での賃金交渉における賃上げの進展を側面支援するため、日銀が円安による賃上げ原資の確保を狙った追加緩和に踏み切ることには一定の合理性があると考えられる。追加緩和に消極的とみられる政府を説得する材料にもなるだろう。