「ブラック企業大賞」2015年の受賞企業が11月29日に明らかになった。ブラック企業大賞実行委員会が記者会見を開いて受賞企業を発表しただけではなく、さまざまな角度から議論されており、苛烈な職場環境についての告発や報道が後を絶たない。

その中で、ブラック企業化を避けるための取り組みを求める動きが強まっており、各社でどのような対策が取られるのかを含めて注目を集めている。

職場環境の改善はグローバルな課題

「働く人にやさしい職場環境の整備」は今や、国際的な問題でもあり、安易な誤魔化しはますます難しくなってきている。国内で「働きやすさ」についての議論が活発化しているだけではなく、国際社会からも労働環境改善の圧力が出てきているのだ。その先頭に立つのが国際労働機関(ILO)だ。

ILOはかねてから、加盟国に対して週48時間労働から週40時間労働への移行を強く求めており、多国間交渉の場では低賃金の長時間労働を排除する動きが高まっている。

例えば、11月にようやく大筋合意に至り、来年4月に発効を予定しているTPPにも、児童労働や強制労働によって生産した製品の貿易の禁止を交渉参加各国が盛り込んでいるとされている。さらに、違反国には、貿易停止の制裁を加えることも決められている。

TPPにさえ盛り込まれた「働きやすい」職場環境の構築については国際まっている。子供を労働者として使用したり誰かを強制的に労働させるといった人権確保の考え方に反するだけではなく、異常に低賃金な労働力の活用によるダンピング(不当な低価格販売)など価格競争の激化を抑制にも資することから、対策が求められているのだ。

ブラック企業大賞に「セブン」を選出

職場環境の改善を図るグローバルな活動が動き出す中で、ジャーナリストや弁護士、研究者らはブラック企業大賞実行委員会が今年も、「ブラック企業大賞」を発表。一般から受け付けた投票も勘案して、「栄えある」ブラック企業を認定した。

働く人々からは「就職を避けるべき企業」や「批判の対象」と受け止められかねず、経営側からも、社会的な批判にさらされたり、コンプライアンスの不備として批判されたりするリスクも懸念されるところだろう。

今年の「ブラック企業大賞」には、セブンイレブン・ジャパンが選定。加盟店への見切り販売を徹底排除の取り組みや、アルバイトの労働条件の大幅な悪化が受賞理由となっており、経営改善の取り組みだったとしても、否定的な受け止められ方に終わってしまった様子だ。

ブラックバイト賞には明光ネットワークジャパン(個別指導の明光義塾)が輝いており、アルバイトの講師が業務外の授業の準備や引き継ぎなどを課されなど、給与対象外の業務に忙殺されていた環境が問題視された様子だ。

アリさんマークの引越社は反論を展開

ブラック企業問題は多数のメディアが採り上げるため、一度話題が広まると企業が正当性を主張することはかなり困難だ。引越社関東(アリさんマークの引越社)の場合も、井ノ口晃平副社長の「恫喝動画」が拡散したことで、「ブラック企業」のイメージが一気に定着してしまった。

「ブラック」として注目される企業は他にもある。「アリさんマークの引越社」として知られる引越社関東は投票で、他社を大きく引き離す1万1875票を獲得し「ウェブ投票賞」を受賞した。併せて、「アリえないで賞」にも選ばれるなど、批判的に受け止められているようだ。

インターネット上を中心にさまざまな場面で論及されているように、問題社員の懲戒処分が重すぎたとか仲裁に入ったユニオンへの同社の対応が「恫喝」だと判断されたことも理由の一つだろう。

他方で、井ノ口氏は発端となった社員に関し、「社員は人身事故を起こしたにもかかわらず相手方に謝罪を直接しなかったり、社内の掲示板を外部に漏らすといったスパイ行為も実施しています」と相応の問題があったことを指摘している。

ブラック企業大賞についても、「社会正義の名の下に、ブラック企業大賞をエサに企業恐喝まがいの行為をして、金銭を要求することが真の目的なのかもしれません。」と懐疑的な見方を同氏は示している。

「ブラック企業」問題はこのように、100%会社側に非があるとは限らないが、指摘された企業はまず、正確な事実確認とそれに基づく問題点の改善に取り組まなければならないだろう。さらには、実態と異なる情報の拡散による企業イメージの悪化を防ぐことも大切で、過ちは認め相手に攻撃材料を与えないことは、企業を防衛する上でも重要だ。

今年、「ブラック企業大賞」各賞に選出された4社の詳細な授賞理由は何れウェブサイト上で公表される予定だが、とくに法令解釈や契約締結のテクニックを弄したり、暴力的な強制・恫喝を行ったりすることに厳しい目を向けている。技術的な問題に終始せずに、あくまで「経営改善」の取り組みの範疇になるような舵取りが今後、求められそう(ZUU online 編集部)

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