(写真=Thinkstock/Getty Images)
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近年、日本では65歳以上のシルバー人材の活用が進んでいる。日本では65歳以上の労働力人口は年々上昇を続けており、10年前の2005年には約500万人ほどだったが2014年には600万人を突破するまでに至っており、生産年齢そのものの上昇も顕著になってきたといえる。

シルバー人材の活用が進んでいる背景には、日本では1992年以降生産年齢人口の比率が低下し続けているため、労働力としてシルバー人材に注目が浴びつつあることや、シルバー人材自体も平均寿命の長期化に伴って経済的な不安から65歳以上も働こうと思う人が増えているという需要と供給が一致したことがある。

こうした動きに拍車をかけているのが、定年延長法の存在だ。これまでは努力義務であった60歳以上の定年を2017年にはすべての事業所に義務化するという法律である。こうした法整備を受け、ホンダが定年を65歳までに延長する方針を打ち出すなど、企業側も定年を延長するなどシルバー人材の受け入れ体制を整えつつある。では、こうしたシルバー人材活用のポテンシャルと落とし穴にはどのようなものがあるのだろうか。

若手との融合でイノベーションを生み出す

シルバー人材を活用することのメリットの一つは、なんといってもその経験を活用することができるという点にある。大卒で働き始めて定年までに40年あまりかけて培ってきたノウハウを定年だからといって眠らせておくことは社会的な損失ともいえる。そのため、この経験をいかにして定年後に活用してもらうかがシルバー人材活用の主な焦点となるはずである。

この知識を活用する一つの方法は、若手への知識移転を狙う法である。例えば、フルタイムで働くだけの体力がなかったとしても若手の補佐役・相談役という立場で若手とシルバー人材が共に働く環境づくりをする。そうすることで、若手社員はシルバー人材から仕事のやり方などのノウハウを盗むことができる。また、そうして若手社員が昔ながらの知識を獲得し、それを今風にアレンジすることで新たな考えが生まれるという可能性はある。

例えば、いちご農園を経営する岩佐大輝氏は自身が培った情報通信技術(ICT)と地元の熟練いちご農家のノウハウを組み合わせることで、いちごの栽培環境をITで管理するという新たな農家の形を生み出している。このように、シルバー人材がもつノウハウを若い社員が吸収できる環境を作れば、組織内でイノベーションが生まれやすくなる可能性は大いにある。

ジョブローテーションで新たな知識の組み合わせを生じさせる

また、シルバー人材のジョブローテーションを行うというのも企業内でイノベーションを生み出しやすい土壌を作る一つの手である。通常、ジョブローテーションは新入社員に会社組織全体の仕事の流れを理解してもらうだとか、社内でのネットワークづくりといった目的から行われるものである。

しかし、このシルバー人材の経験からイノベーションを生み出すために、あえてそのシルバー人材が慣れ親しんだ業務で力を発揮してもらうのではなく、他の業務で働いてもらうことによって、これまでにはなかった知識の組み合わせからイノベーションが生じる可能性もある。このように、シルバー人材のノウハウを活かすために必ずしもそのノウハウが直接的に生きる領域で働いてもらう必要はなく、思い切って他部署で働いてもらうということが有効となりえる。

昔ながらの仕事のやり方に固執や体力面での不安が

ここまで、シルバー人材を活用することによって、組織内で新たな知識が生まれやすくなるというポテンシャルについて議論してきたが、もちろんその落とし穴もある。その一つは、長年の経験が逆に仇となるケースもあることだ。シルバー人材は40年あまり慣れ親しんだ仕事のやり方や考え方がある程度固まってしまっている可能性は高い。

その場合、若手社員と組ませたり、慣れない仕事を任せたりしても考え方の違いになじむことができず、他の社員との軋轢を生んでしまう可能性がある。そのため、シルバー人材には期待するアウトプットをしっかりと伝えたり、仕事の進め方自体は自由にしてもらうという方法で仕事の進め方の違いから生じる衝突の回避を図ったりしなければならない。

また、体力面の問題から長時間の労働には向いていないという可能性にも注意が必要である。広島シルバー人材のアンケート調査によると、シルバー人材の50%ほどは1日5時間以下の就業時間を希望しており、月平均の就業日数でも月14日未満を希望する人が50%を超えている。

つまり、シルバー人材を活用するためには、シフト制などで働くことができるようにすることと、そのシフトの交代時にスムーズに仕事の受け渡しが行えるような仕組みを整えるといった管理の手間がかかってしまうという落とし穴に気をつけなければならないだろう。(ZUU online 編集部)

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