「政」高「官」低になった?立法と行政の力学

バラマキの様に見える補正予算が付けられている理由の一つは、最強の省庁であった財務省の発言力の低下であろう。もしも財務省や官僚の意向が政策に大きく反映されるのだとすれば、現在、打ち出されている政策にはなりにくいと推測できるからだ。それを象徴するのが、2017年に行われる予定の消費税に対する軽減税率の導入だ。

財務省は軽減税率の導入論議の際に、自民党内の反対意見とも協調しながら、自分達の軽減税率案を提出するなど消極的な姿勢を示していた。少なくとも生鮮食品のみの適用に絞る方向であったが、軽減税率の導入、加工食品も適用するべきとの公明党案を受け入れた形となった。

軽減税率の導入議論の際、菅官房長官は財務次官および主税局長を呼び出し、「財源を探すのは財務省の仕事だ」、「できないのであれば、2017年の消費税増税は先送りだ。」と迫り、財務次官が抵抗したところ「これは自公連立政権の正念場であり、政局なんだ」と一括したと噂されており、政治家の発言力が官僚のそれを上回っているとみることもできそうだ。

また、すでに新聞が軽減税率適用を獲得した様に、各業界において軽減税率適用の為の陳情合戦が行われる事が懸念されており、実務においても税務官僚の裁量余地が極めて高いものとなってしまうために財務省は基本的に賛成ではないとされていた。

一方で、軽減税率導入の顛末で行われたように、政治、政局によって意思決定がなされることは、経済復活のための長期的な視点からは、マイナスの影響を与えるとの懸念も出てこざるを得ない。

市場と協調的な官僚を待望

政局によるマイナスの影響への対応を踏まえて、期待されるのが官僚の長期的な目線での政策提案などだ。従来は専門的な知見を生かして長期的に成果を上げる政策も取り入れられてきたものの、政局目線の、その場しのぎの政策を実施を予防する効用もあるとの見立てもできるからだ。

つまり、利権の存在や特別扱いで批判を受けてきたのも事実だが、この考えに立てば「弱すぎる官」もそれはそれで問題にならざるを得ないということだ。

脱官僚、政治主導という言葉が政権交代前から言われてきた。しかし本来であれば政官は相反するものではなく、互いに協力しながら国家経営の為に働かなければならない立場同士である。政治に関しては選挙という審判や総理の交代と言った政局がある為にどうしても短期的な結果を見てしまう構造的な問題が存在する。

他方で、官僚については国家公務員として、専門家として、超長期的な目線での政策提案、行政執行を行っていくこともでき、そこで求められるのは民間企業と、市場と対話を行い協調しながら行政執行できる官僚の登場かもしれない。(ZUU online 編集部)

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