(写真=Thinkstock/Getty Images)
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安倍政権が発足して早くも3年が経過した。長期にわたるデフレ脱却を目指すため、大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略「3本の矢」からなる経済政策・アベノミクスを政府は実行。日本銀行総裁に黒田氏が就任し、「異次元緩和」がスタートしたことを記憶している人も多いことだろう。

さらに、2015年9月、安倍首相は名目GDP(国内総生産)600兆円の実現の達成という目標を新たに打ち出した。一見すると途方もない数字であるが、達成する成算は果たしてあるのか。

GDP600兆円はどんな規模か?

安倍首相は2015年9月、自民党総裁再選の記者会見において掲げた「2020年までにGDP600兆円を達成させる」という目標。GDPは国の経済規模を示す主要な経済指数で、「国内で生産されるモノおよびサービスの付加価値の合計」だとされており、その約6割は個人消費だ。2020年度には名目GDPが600兆円に達する試算を前提とすれば、名目3%程度の経済成長の実現が見込まれる。それが政府の見方と言える。

他方で、日本の名目GDPは、最近10年間は、500兆円前後で推移しており、2014年度は約490兆円だった。そのためアベノミクス第2弾としては、GDP600兆円の実現をかなり大胆な数字ととらえる向きもあった。

ちなみに政府の年間の予算が約100兆となっており、規模としては単純にその6倍がメドとなる。より詳細には、2016年度の政府予算案は約96兆7000億円の規模となっており、モノ・サービスの付加価値の規模を、5年間で、政府の年間予算と同じ程度拡大させようとする野心的なものだ。アベノミクス3本の矢の第2弾の中心的な目標の一つとなった。

「GDP600兆円の実現は非現実的」や「矢ではなく的だ」などとの批判が出される一方で、一部のエコノミストは「大きい目標を掲げるのはいいことだ」との評価を示すなど、賛否も分かれていた。さらに懸念されていたのがその実現性だ。

GDP算出方法の変更で約16兆円の押し上げ効果か

そもそもGDPは何かというと、国連で策定した国民経済計算(SNA)に基づいて算出される経済指標で、国際的にも受け入れられているのは周知のとおりだ。同指標の計算方法は2009年に算出方法が改定されていたが、日本の対応は遅れていた。

国連は加盟国などに対し新方式へ移行するよう求めてきており、主要各国はすでに新たな方式をGDPの算出に適用。一方で日本はというと、政府は2016年12月に発表される7月~9月期の2次速報から新計算方法への移行を予定している。

新計算方式のGDPでは、企業の研究開発費、特許使用料、不動産仲介料、政府の戦車・艦艇の購入費等が加算されることになっており、従来はGDPとして算入されていなかった項目まで加算されるようになる。具体的には、新製品の試作に使う材料費や人件費、ソフトウェア開発費などは、GDPに加算されていなかったものの、今後はGDPの一部として統計上も考慮されることになる見通しなのだ。

より詳細には、われわれ消費者の手元に届く最終製品の自動車はこれまでもGDPに含まれていたが、搭載されているエンジンや精密機器の開発費用は旧来のGDP計算方法からは除外されていたのである。加えて、日本企業は生産拠点が海外にあっても、情報流出の防止などのために開発部門は国内に置くことが多いことから、新基準の下ではGDPの底上げが期待できるとされている。政府の試算でも、新項目の加算によりGDPも3%程度の上昇(約16兆円)するのではないかとされている。

他の先進国も同様の恩恵をすでに享受してきている。2013年に新基準を導入した米国は3%強、2014年の英国は2%前後と軒並みにGDPの押上げ効果があった。新しい項目が加えられたことにより、今までは目に見えなかった経済活動が計上され、「より経済の実態に近い数値となった」とおおむね好意的にとらえられてもいるようだ。

GDP600兆円は驚くべきものではない

ただGDPの計算方式の変更を前提とすれば、GDP600兆円という目標へのハードルも必然的に下がることになる。2015年のGDPは503兆円と予測されているが、前出の約16兆円のGDP押し上げ効果を想定すれば、自動的に519兆円に拡大する。同時に、積み上げるべき名目GDPの正味は81兆円となり、目標としてのインパクトも小さくなる。

さらに忘れてはならないのは、GDPの新算出方法の導入が安倍首相がGDP積み上げを宣言するよりも以前に決まっていたこと。「脱デフレ」のとも密接に関連する物価上昇を加味すれば、より容易に達成できる目標だとみることも十分にできる。

たとえば、GDP600兆円の実現には年間で3%の経済成長が必要とされているが、GDPの1.5%増(日経新聞による予測では2015年は約1.7%の成長)に加え、物価上昇率を1.5%まで上げることができれば、3%の経済成長により600兆円目標は理論上、達成できる。

GDPの推移をみても、バブル崩壊後のペースでGDPが拡大していけば、目標に迫ることも十分にできそうだ。厳しい景気であったにもかかわらず、毎年GDPは10兆円上積みされる状況であった。今後、バブル崩壊後の低迷期と同じ水準の年間10兆円を上積みしていけば2020年には570兆円と達成にはまだ届かないものの、一般的な成長率を実現するだけで目標に迫ることができる公算だ。

アベノミクスの成功を前提とし、政府目標の年間名目3%の経済成長を遂げることができるのであれば、ちょうど2022年には600兆円となると政府は試算しているという。だとすれば、2020年の「GDP600兆円の実現」は、GDPの新計算方式の導入と、スローペースの成長でも目標に近づいていけるとすれば、まだ比較的に実現性のある目標だともいえそうだ。(ZUU online 編集部)

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