一つの節目を迎え必要な議論:量拡大の功罪、コミュニケーション

日本経済は内憂外患の様相を呈しはじめている。中国の景気減速や原油安など世界経済の懸念材料は消えない。国内では10-12月期GDPは2四半期ぶりに前期比マイナスになりそうだ。また甘利大臣の辞任を受けて政治と金の問題で国会運営の停滞もさけられない。今回日銀がマイナス金利という劇薬を服用したが更なる金融緩和の出番が来ることも十分予想される。

総裁も「必要な場合はさらに金利を引き下げる」とすでに言及している。この先の追加緩和がより効果発揮できるようにいくつかの議論が必要になっている。一つ目はこの2年の総括である。黒田緩和が進めた量的・質的緩和がどのような効果を発揮してきたのか、また副作用や限界などについての評価が必要だろう。また当初の2年としたコミットにどのような効果があったのかなどの議論も必要だ。

さらに市場とのコミュニケーションをどうするかである。2014年10月のハロウィン緩和、今回のマイナス金利導入と2回、市場は黒田総裁にだまされたという印象を持っている。

黒田総裁はついこの間まで、追加緩和の必要性について「このままの政策で、十分に2%の物価安定目標を達成できると思っている」と自信たっぷりに発言していた。またマイナス金利についても「検討していない」としていた。

一瞬で政策の是非は変わる、緩和の効果を最大限にするためにサプライズが必要だと言われればそれまでのところはあるがあまりに連続性がない。黒田総裁が会見で丁寧に緩和に至った背景説明をしても、これを数度繰り返されれば、まったく市場は信用しなくなる。また個々の審議委員がどう考えているのかなどの情報発信も工夫の余地はあるように思う。

矢嶋康次
ニッセイ基礎研究所 経済研究部

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