(写真=HPより)
(写真=HPより)

月間利用者数が5500万人を超える料理レシピサイトを運営する「クックパッド」は1月19日、創業者で筆頭株主でもある佐野陽光氏から、同社の取締役刷新を求める株主提案を受け取ったことを明らかにした。3月下旬に開催予定の定時株主総会において全取締役の交代を求める株主提案を行使する模様だ。発表翌日の株価は前日比で18%も下落。2週間ほどで3割程度落ち込んでいる。

一部のアナリストは、穐田誉輝氏以下の現経営陣による多角化戦略で、2017年4月期に経常利益100億円を達成するとの目標設定は投資家からの信認があったものの、この提案によって事業の方向性をめぐって株主と取締役会の対立が表面化し、成長期待が損なわれる懸念があるとしている。

その後、2月5日に佐野氏の提案を会社側の取締役選任案と一本化することで合意したと発表しており、この「内紛」はひとまず収束したかのように見える。

佐野氏の主張は原点回帰と企業価値の向上

佐野氏の主張では、同社が現在、基幹事業である会員事業や高い成長性が見込まれる海外事業に経営資源を割かず、料理から離れた事業に注力していることを挙げたうえで、「中長期的な企業価値向上に不可欠な一貫した経営ビジョンに大きな歪み」が出ていると指摘。にもかかわらず、一部の取締役が特別委員会を設置。必要性もないのに多額の費用をかけて得た専門家の意見を濫用、公正中立を装った文書を発して現在の自らの経営を正当化していると主張。社内に「不要な亀裂と混乱」を生じさせており、取締役を刷新する必要があると考え、株主提案に至ったという。

現代表執行役の穐田氏はレシピに代表される料理関連の中核事業の他に、新規事業として日用雑貨販売、ウエディング、資格取得、漢方薬、レジャー情報、知育など様々な市場への多角化を図っている。

佐野氏は経営資源を会社設立以来の「料理」に関連する中核事業に集中すべきであり、多角化とそれを正当化する現行のマネジメント体制を批判している。その大きな論点は、企業価値の向上に繋がるか否か、という点だ。

元カカクコム社長の穐田氏が創業者の佐野氏に替わって社長に就任したのは2012年3月だった。中長期的な成長戦略の中でグローバル化と技術力向上は必須として、佐野氏は取締役兼執行役として自らが陣頭指揮を取り世界戦略と技術開発に集中し、穐田氏が新規事業を含む国内経営を担当する新体制で経営にあたっていた。

起業家が経営から退きながらも引き続き業務に携わるのは、マイクロソフトを設立したビルゲイツがCEO職をスティーブ・バルマー氏に移管させた後も会長兼チーフ ソフトウェア アーキテクトとしてソフトウェア開発に関わっていたことを彷彿とさせる。クックパッドの場合は、旧CEOと現CEOの方針が決定的にずれてしまった。

事業利益によって多角化は正当化されるか?

2015年12月期第3四半期決算資料によると、売上収益は前年同月比で+64.3%の100億600万円、営業利益も+60.3%の42億4800万円を達成した。売上収益の内訳は以下のようになっている。

レシピサービス事業が80億8800万円(81%。内訳は関連プレミアム会員事業47億2300万円、広告事業31億円、買物情報事業1億5700万円、関連書籍監修料など1億800万円)

その他事業が19億1400万円(19%、主な内訳は「みんなのウエディング」事業9億500万円、衣料・雑貨オンラインショップ「アンジェ」事業952百万円など)。

その他の事業は、中核となるみんなのウエディングの他に、習い事・資格取得のサイタ、レジャー情報のHoliday、生活雑貨のアンジェ、漢方薬情報の漢方デスク、知育アプリのキッズスター、フリマアプリのFRIL、家計簿アプリのZAIMなど多岐にわたる。

売上利益と営業利益の大幅な伸長は特に、2015年12月期第3四半期より連結子会社化した「みんなのウエディング」事業によるところが大きい。この事業を行う理由として、クックパッドと同じユーザー投稿型サービスであるため、サービス構築のノウハウと技術基盤を共有でき、事業実績を加速できるとしている。貢献度は、売上高は2015年9月期で18億8800万円、前年同期比で+25,5%と伸長したものの、販売管理費の増加により48.3%減少した。利用者数・口コミ数は増えたが、営業利益は減少傾向にある。

会員事業・海外展開の伸びしろは?

月間利用者数は2014年10月の5033万人に対し、2015年9月には5576万人と10.8%の増加。スマートフォンからのアクセスが54%を占めている。決算資料で見る限り、利用者は2013年7月以降順調に伸び続けている。

外国語での月間利用者数は14年10月の606万人に対し、15年9月には1,682万人と+178%と大幅に伸びている。ただしスペイン語45.8%、アラビア語25.5%、インドネシア語24.3%に対し、英語は4.3%に留まる。英語圏の人口は第二外国語としての人口も含めると世界の25%程度と言われているので、英語圏での拡大の余地は大きいといえそうだ。

何のための多角化?何のための原点回帰?

今回佐野氏が提起している「企業価値の向上」が何を指すのかで、妥当性の判断は分かれる。クックパッドは日本では地位を獲得してえるが、ブランドの将来価値をさらに高め成長させるために、海外市場の可能性を優先することは正論といえるだろう。

一方で、多角化または買収によって企業規模を拡大することも会社全体の利益を高めるという点では企業価値の向上といえる。この場合、多角化が相乗効果を持つことが理想であるが、今のところ、料理レシピ事業と多角化事業の相乗効果は不明だ。

経営資源がどの程度あるのか(または今後増強できるか)は明らかではないが、限られた経営資源を分散させることは戦略上有効ではないだろう。

「毎日の料理を楽しみに」というスローガンを掲げているが、これがまさにコアコンピタンスを表しており、それが現在の企業価値であるはずだ。投資家から見れば、利益をあげればどちらでも構わないかもしれない。

だが長期的に見れば、「料理」という分野で国内・海外ともに圧倒的なポジションを獲得することが“存在価値”だろう。創業者で筆頭株主でもある佐野氏のこだわりもそこにあるのかもしれない。

2月5日の発表で、対立はひとまず落ち着いたようにも思えるが、根本的な問題が解決されたのかどうかは分からない。果たして同社の今後の経営方針は、レシピサイトのように支持され、信用と信頼を勝ち取れるものになるのだろうか。(ZUU online 編集部)

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