(写真=PIXTA)
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労働力の中心である20歳〜35歳が人口の約20%を超えているカンボジアには、先進国企業の参入が増え続けている。多国籍文化がひしめく環境の中で、真の国際力を発揮できるビジネスパーソンになるには、言語だけでない実務的スキルが必須だが、あらゆる職場で実務的教育が足りないことが大きな課題となっている。

現地の若者を採用するということ

カンボジアの若者たちは、日本の若手ビジネスパーソンと比べても、ある意味のんびり気味に映る。年配の読者からすれば、今の日本の若手にもどかしさを感じているかもしれないが、カンボジアではおそらくそれ以上だ。外国から来たマネージメント層はここで、「なぜやるのか、どうやってやるのかと主体的に考え、動く力が欲しい」と感じている。指示をしたことだけで完了、分からない時に質問も少ない。滞ってしまう業務のフォローに追われる。

だからこの国で現地の従業員と共に働くには、根気と忍耐力が必要だ。何度も言い、何度も聞き、何度も見せる。変化や定着が見えるまで、見守っていけるかがカギとなるのだ。

なぜそうなったのかといえば、致し方ない背景もある。それは彼らを育てるはずだった先輩世代(今の35歳から50歳)は、ポルポト政権によって奪われてしまったからだ。このため労働者としての基本的指導を受けていない若者が多いのだ。

ポルポト政権の歴史を紐解く

複雑な国内情勢、政党支配下の移り変わる中の内戦で、数十万を超える罪のない人たちが犠牲になり、200〜300万人とも言われる難民が都市部に生きる場所を求めざるを得なくなった。その時代の米国やベトナムが大きく絡むポルポト政権の目的は共産主義者の撲滅。その後、食糧調達、確保のために難民を強制的に農業に従事させている。

さらには、その難民の中からも反発勢力を根絶するために有能で知恵のある人々、例えば教師、特殊な才能を持つ者、医師、思想家、法律家などの処刑を徹底した。この知識人という判断は、大きく常識を欠いたもので、本を読む者、海外に行くもの、子供に教育をするもの……密告すら奨励されていたという。ここで殺された犠牲者は200万人とも言われている。大人がいなくなった時代といえるだろう。

このため、今の20代など若い世代はすぐ上の世代、身近な先輩がいなかったのだ。

カンボジアの経済の現状

近年のGDPをIMFの資料に見てみると、10年前でやっと50億ドルを超え、この後10年で3倍、観光や縫製産業の発展もあり、成長の速度を上げるここ数年でその4倍額の200億ドルに届こうとしている。

急成長したとはいえ隣国、タイやベトナムの区内総生産額と比較してもかなり低く、人口の半数は貧困層である。開発途上の状態は今も続いているのだ。人々の姿を実際に見ても、ビジネスに値する様相をしている者もいれば、薄汚れた服で年中をやり過ごしている者もいる。

日本は戦後から高度成長期を経て豊かな国と言われるまでになった。カンボジアは先にも記したが、引っ張る世代が少ないことはマイナスに取れるが、世界の状況が日本の時とは違う。ITの浸透度の高さが大きな後押しをし、日本の復興や成長に掛かった時間を大きく短縮することは明らかだ。

カンボジアの若者たちと共に働くということ

伸びしろの多い国カンボジア。可能性に満ちた若者たちが今後この国を担っていくだろう。日本では、若干の教育の差こそあれ、ほとんどの人が家族や親せきの中に年長者を持ち、近所、地域、学校で自分の道を正し、導いてくれた恩師がいるだろうが、カンボジアの若者にはその出会い、機会がない。

マネージメントする側、また外国人として現地の人と共に働くなら、彼らの背景を心留めておくことで、わずかでも若者の働く姿の「理由」や「理解」につながるはずだ。

「考えない」「意見を言わない」「疑問を持たない」など、私たちが難しさを感じるカンボジアらしさは、かつてそうしなければ生きられない強烈な歴史があったことの反映なのかもしれない。(ZUU online 編集部)

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