Uターン、Iターン
(写真=PIXTA)

いま、国全体での課題となっている「地方創生」。人口減少に悩む地方のまちを活性化させて人口流出を防ごうと、各地で官民連携のさまざまな取り組みが行われている。たとえば、総務省や文部科学省が主体となって、地方大学に進学する学生を無利子奨学金の「地方創生枠」へ推薦したり、地方自治体や産業界が協力して就職説明会や相談会を企画したりしている。

この流れは社会人にも派生しており、上京先から生まれ育った土地へ戻る「Uターン」や、出身地以外の場所に移住する「Iターン」での転職が盛り上がりを見せている。

会員制転職サイトを展開するビズリーチが首都圏勤務の社会人(平均年収940万円)を対象に行ったアンケートでは、「やりがいがあるポジションであれば転居して別の地域に勤務することになっても転職を前向きに検討する」と答えた人が69%にのぼっている。「自身が生まれた土地や育った土地に恩返しをしたい」、「高齢の親の近くにいた方が安心」という理由のほか、「やりたい仕事ができれば場所は問わない」という声もあった。

受け入れ体制進む

転職者などの移住者の受け入れ体制は各地で整えられてきている。青森県は「青森に住みたい!暮らしたい!〜移住・定住促進事業」と銘打ち、UターンやIターン希望者を対象に転職支援マッチングを始めた。さらに指定の地元企業への就職が決まった人に5万円の準備金を支給している。

鳥取県と新潟県は2014年から15年にかけて、ファイナンシャルプランナーに委託して「暮らしライフデザイン設計書」を作成。より移住をリアルに感じてもらおうと、東京との生活費用の比較を算出。収入は東京の方が高いものの住宅購入費や食費が安いことから、両県とも「経済的な差はほとんどない」と強調している。

たとえば鳥取の生涯平均貯蓄額は東京の1257万円に対して1228万円。新潟の生涯収支は東京と同じ900万円の黒字だ。その上で、東京より「小学校の教員1人あたりの児童数が少ない(鳥取)」など、こどもの教育環境の違いを利点にあげている。

福井県も、共働きのしやすさや住宅購入費の安さから、東京で暮らすより経済的に「お得」だという面をアピールしている。県によると、23歳から60歳までの家計収支は東京を3000万円上回るそうだ。

福井県は法政大の調査で2011年には「幸福度日本一」に輝き、小中学生の学力テストで常に上位に入るなどしている。さらに先日報道された都道府県別の「子どもの貧困率」でも、全国平均の13.8%を大きく下回り5.5%と全国最下位を記録した。

それでも、福井県から大学・短大進学で県外に出た学生のうち、就職で戻るのは25%前後。まだまだ取り組みは道半ばといえるだろう。

経験者の声は

マイナビがUターン転職の経験がある全国の20~39歳の男女(正社員)を対象にしたアンケートでは、転職について「非常に満足」「やや満足」を合わせた回答が50.8%となり半数を超えた。「非常に不満」「やや不満」は合計で14.2%にとどまり、地方への転職は成功例が多いことが分かった。理由については、「地元の方が、生活環境が充実するから」という回答が最多だった。

しかし掘り下げてデータを見てみると、そう単純な話でもないことが見えてくる。同じ調査では、転職した直後の年収について、「増加した」と答えた人が28.0%なのに対し「減少した」人は51.6%にのぼる。「変わらない」という回答も20.0%だったが、30代後半に限定すると「年収が31%以上減少した」人が16.6%(全体12.2%)となり、年代が上がるとともに「地域間格差」が広がっている現実が浮き彫りとなった。

別の統計では、関東在勤者の収入を100とした場合、中国・四国が84%、北信越が80%、北海道・東北が79%、九州が78%となっている。九州や北海道・東北の平均年収は関東の8割に満たないのだ。その差は金額にすると113万円にもなる。

現状の年収を「仕事に見合っている」と考える人の割合は、北海道・東北で19%、中国・四国で16%となり、関東の32%、中部・東海の30%、関西の31%と比べると明らかに低いという結果も出ている。しかし詳しく見てみると、九州では「見合っている」と答えた人が32%、中国・四国では「仕事に対して200万円程度高い」と回答した人が43%いるなど、一概に「地方は労働単価が安い」とは言い切れない現状も浮かんだ。

自分の「優先順位」を明確に

とはいえ、ただ「たくさん稼ぎたい」のであれば、U・Iターン転職は避けた方が賢明だろう。そして「場所よりとにかく仕事内容」という場合も、地方はリスクが高いといえる。東京近辺に比べて企業の絶対数が少ないことから、希望の職種・業種の求人が少なかったり、なかったりする可能性があるからだ。

しかし、それ以外のところに満足度を求めているのであれば、地方転職により人生が豊になる可能性は大いにある。アンケートでは、地方へ転職した後に満足している点(複数回答)について、「家族が喜んだ」という回答が41.2%で最多となった。以下「趣味・余暇などの場・時間が充実した」が32.8%、「生活の利便性が良くなった」が24.0%と続く。家族との距離の近さや、趣味・余暇に費やす時間を得ることを、「満足度」につながると感じている人が多いということだ。

地方と都会、どちらで働くか。価値観は人それぞれで、この問いに正解はないだろう。仕事の内容なのか、収入なのか、家族なのか、生活環境なのか-。転職や移住を検討しているビジネスマンは、まずはこの中での優先順位を明確にした上で、行動に移す必要があるだろう。(ZUU online 編集部)

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