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Written by 長尾義弘(ながお・よしひろ) 55記事

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金持ち「レンブラント」貧乏「フェルメール」

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

先日、森アーツセンターギャラリーで開催されている「フェルメールとレンブラント展」を見てきました。

オランダの画家フェルメール(1632〜1675年)は、生涯を通して小さなサイズの絵しか描きませんでした。かたや、同じ時代で同じオランダの画家レンブラント(1606〜1669年)の絵は大型の作品が多くあります。

たとえば、レンブラントの「夜警」は、363×437センチの大判です。実は、この「夜警」1枚の面積の中に、フェルメールが描いた全32点の絵が全部入ってしまいます。

どうして、フェルメールの絵は小さい作品しか描かなかったのでしょうか? その背景を経済の視点から紐解きましょう。

なぜ、フェルメールは小さい絵しか描かなかったのか?

当時のオランダは、どのような経済状態だったのでしょうか。

1588年、スペイン・ハプスブルグ家の支配にあったオランダがネーデルランド連邦共和国として実質上の独立を果たしました。この時に台頭してきたのが、王侯貴族ではなく、富裕な市民階級でした。市民階級の台頭は、他のヨーロッパ諸国とは大きく異なる特徴といえます。

レンブラント「夜警」1642年 油彩・キャンバス、363×437cm(アムステルダム国立美術館)
レンブラント「夜警」1642年 油彩・キャンバス、363×437cm(アムステルダム国立美術館)

この時代のオランダは、ヨーロッパのなかでも突出して経済が豊かでした。オランダ東インド会社などを設立して、オランダの黄金時代でもあります。この時期に日本でも長崎の出島において、オランダとの貿易が行われていたことからも分かるように、貿易や、植民地政策で巨万の富を築いていました。

レンブラントが活動していたのは、オランダの中心地アムステルダム。富裕なスポンサーが集まっている場所でした。

「夜警」という作品は、自警団の肖像画なので、資金を提供したスポンサーの顔が全員入っています。もちろん隊長は、中心に描かれています。これだけ大きい絵ですので、それなりのお金で依頼を受けたのでしょう。

かたや、フェルメールは、オランダの地方都市デルフトで活動をしていました。デルフトも、貿易で栄えた場所ですので、かなり裕福な資産家もいたと思われますが、アムステルダムとは比較になりません。スポンサーも限られていたのでしょう。社長夫人の依頼とか、居間に飾る絵の依頼といった感じだったと思われます。ですから、自ずと絵のサイズは、小さいものにならざる得ません。

フェルメール「水差しを持つ女」1662-65年 油彩・キャンバス、45.7×40.6cm(メトロポリタン美術館)
フェルメール「水差しを持つ女」1662-65年 油彩・キャンバス、45.7×40.6cm(メトロポリタン美術館)

17世紀の経済的繁栄をしたオランダという場所で、多くの芸術家が生まれ、文化が栄えたのは必然です。

そして、大きなスポンサーがいるからこそ、レンブラントのような画家が生まれ、大作を残すことができたのです。

一方、文化の栄えたオランダの地方都市デルフトでは、フェルメールのような天才が、小品ながらオーダーを受けて傑作を生み出しました。

レンブラントの一筆に対して、フェルメールの作品は何日もの時間を費やして描いたものと思われます。

ちなみに、フェルメールの年収は推定で600ギルダーほどとされています。フェルメールは妻の実家に同居していて、子供は10人もいたといいます。パンを購入するために借金までしていたそうですから、かなり厳しい生活だったと想像できます。

今回、フェルメールの作品「水差しを持つ女」が日本で初めて公開されました。水差しと洗面器の組み合わせは「受胎告知」を思わせるもので、清純のシンボルとして描かれたのです。

なぜ水よりもダイヤモンドの方が高いのか?

ところで「水」と言えば、人間が生きていく上で必要不可欠なもの。飲むこと以外にも、様々な利用法があり、作物を育てるにも重要なものであります。しかし、非常に安価に手に入れることができます。空から降ってくるものですから。

では、「ダイヤモンド」はどうでしょうか?

ダイヤモンドは、食べられないし発電にも利用できない、なくても生活には全く支障は出ません。しかし、とても高価で、掘り出して加工するのにも非常に手間がかかります。どうして、「水」のように生活する上で、大切なものが安くて、ダイヤモンドのように役に立たないものが高いのでしょうか?

これは、「国富論」などを著した有名な経済学者アダム・スミス(1723-1790年)の有名な命題「水とダイヤモンドのパラドックス」です。アダム・スミスは、「使用価値」と「交換価値」と言うことで、この命題の説明をしています。

「使用価値」とは、使用することで得られる有用さ、使い勝手の良さで、必ずしも「交換価値」をもちません。「交換価値」とは、他のものと交換するときの優位さ、つまり取得には費用が必要で、とくに労働量の大きさによる場合があります。

つまり、水は、「使用価値」はあるが、「交換価値」を持たないのです。経済学では、価格の話をするときは、通常「交換価値」のことを指しています。ものの価値は、需要と供給、希少性などで決まってくるのです。その意味では、オリジナルの絵画などは得に希少性が高いですね。

また、この需要と供給、希少性については、「限界効用」を使っても説明ができます。「限界効用」とは、人間は消費から得られる効用つまり快楽は比例的ではないということです。

たとえば、フェルメールの代表作に「牛乳をそそぐ女」がありますね。喉が渇いているとき、1杯目の牛乳は200円を出しても美味しい、非常に価値のあるもので、大きな快楽を得られます。2杯目の牛乳も、まあ美味しいでしょう。でも200円の価値ほどはないかも知れません。2杯目は2倍の快楽ではなく目減りしています。3杯目だとどうでしょう? もう50円でも払いたくはないのではないでしょうか。快楽は半分以下ですね。面白いことに、同じものでもいっぱいあるというのは、限界を超えると価値が減ってしまうということなのです。

長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)、『保険はこの5つから選びなさい』(河出書房新社発行)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

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