前回は「配当利回りアップ投資法」を紹介した。 第6回目の連載では株を売るときに「間違いやすいポイント」について解説しいく。 ベテラン個人投資家のAさんはある一部上場株を3000株保有していた。セグメントは景気敏感といえる業種だ。もう十分利益が出ているので売ろうと思うが、会社側の発表では今期(ということは来年の3月末)に増配を予定していると発表があった。

目次

  1. 株の売り注文を出したものの、なかなか約定しない
  2. 株を売る時に勘違いしやすいポイント
  3. 覚えておきたい「成り行き」と「指値」の秘訣
  4. 株売却をためらわせる「売却後の大暴騰」

株の売り注文を出したものの、なかなか約定しない

そこでAさんはちょっと欲張りな値段で売り指値を出しました。ところが、注文を出したものの、なかなか約定しないため、目下イライラと日々を過ごしているといいます。

最近、Aさんが見たニュースでは日本のあるトップ企業の社長が業績発表と今後の見通しについて述べていました。それによると「前期は最高益更新を果たせたが、それは為替の影響が大きかった。今期は今までと様相が違っていると認識している」という内容でした。早く約定しないと株価が崩れていまうとAさんは気になり始めています。

さて、みなさんがAさんだったらどうしますか?

株を売る時に勘違いしやすいポイント

Aさんの考え方は理解できます。買った株が上がった。利益が出ているから売りたい。でも、どうせ売るならさらに高く売りたい。会社側は来年に増配を実施すると言っている。ということは業績がいいわけだから、欲張りな値段でも売れるはず……。Aさんの株の売り注文はこういうロジックで成り立っているわけですね。

しかし、この考え方では希望価格で株を売るのは難しいといえます。せっかくの株の利益を売りそこねて、ふいにしてしまう可能性も大きいのです。

なぜなら、以下の2点を混同して売値を決めているからです。

まず、株を売るという行為を優先させるなら、増配だろうが何だろうが、寄付き成り行きで売るのがベストです。もうかっているからこそ、売ろうという気持ちになった原点に帰れば、売ることが最優先で、売値にこだわることはないはずです。

「売る」きっかけは「今のもうけを確定させたい」という気持ちからだったはずですが、「さらなる高値で売り抜けたい」という欲がでているために、その気持ちがブレているのですね。「もっと儲けたい」と思うあまり、「約定しない間に指値未達で値下がりする可能性」に気がつけずに「高値で指値を出しておく」ことを優先させてしまっています。

仮に約定しない手前で株価が失速した場合、「ああ、あの時、売っていれば」と後悔します。そして、今度は、株価が失速する直前の高値に指値変更しがちです。このときも「その値段だったら、また戻れるだろう」と考えてしまうのです。

しかし、一度株価が崩れてしまうと、よほど運が良くない限りは希望する値段では売れません。行き着く果ては塩漬け株を抱える羽目に。

株を売る場合は「確実に売る」「そうでなければ利益は絵に描いたモチ」という点をわきまえて、「増配なのだから」「いい製品を発表したのだから」といろんな理由を株の売買値段に盛らないことです。

売る側には「いい情報の分、プレミアムがつくはず」と思えますが、買い手には「割高」に感じられることもあるのです。相手がお得に感じない値段では、株は売れないことに気が付くべきです。「お得だ」「割安だ」と感じてくれる人が自分の売り株の引き取り手なのですから、自分がちょっと惜しいな、と思うくらいの値段がちょうど良い売値です。

目一杯の欲張り価格ではよほどの突発的なことがない限り、買い手は現れません。その点を理解して「利益が出たら売る」を優先したいですね。

覚えておきたい「成り行き」と「指値」の秘訣