モンスタークレーマー,事例,対処法
(写真=リフォーム産業新聞)

「こんな工事頼んでない。全部やり直せ!」。このような事実に反する苦情や法外な要求をする「モンスタークレーマー」は、近年大きな社会問題となっている。しかしクレームは正当なものも多いため、決しておざなりにはできない。今回は「悪質クレーム」を取り上げ、その事例と対処法を解説する。

身に覚えがない叱責

東京都でリフォームを行うA社は、今年2月に深刻なクレームトラブルに見舞われた。マッチングサイト経由で成約した案件だったが、着工してから雲行きが怪しくなった。

B社長は施主とのやり取りをこう振り返る。「一緒にショールームに行って商品を決めたのに、取り付けた後に『そんなものは頼んでいない』とお叱りを受けました。それだけでなく、家財道具を移動させた物置から『物がなくなっている』などと、様々なところでクレームを言われました」

何とか完工まで漕ぎ着けたが、その後「床が傷ついている」との呼び出し。訪問すると、施主が掃除の際に床を傷付けていたことが分かった。

同行したメーカー担当者が「普通に生活していれば傷はつかない」と説明しても納得は得られなかった。工事費用は900万円だったが、取り換え、追加工事、人工代がかさみ、ほぼ赤字。担当した営業社員によると、打ち合わせ段階で、値引きを匂わす発言もあったという。

「当社は、基本的に値引きはせず、お客様の実現したい生活を叶えるリフォームを第一に考えています。打ち合わせの段階でこちらから断った方がよかったのかもしれません」(B社長)

増える強情型と狡猾型

このような不当なクレームトラブルに、頭を悩ませる企業は多い。日本法規情報(東京都港区)の調査によれば、「顧客からのクレームに対してどう感じたか」という質問に対し、「納得できる内容で真摯(しんし)に受け止めた」と答えたのは33%にとどまる。「大したことがないのに大げさに感じた」が32%、「悪質なクレームだと感じた」が26%、そして「トラウマになった」は9%。10人に1人は、クレームに強い恐怖感を抱いていることが分かる。

「不当な要求をする『モンスタークレーマー』に関する相談は増加している」と指摘するのは、エンゴシステム(広島県呉市)の援川聡社長。同社は企業や団体、地方自治体へのクレーム対策コンサル事業を手掛けており、援川社長は元警察官という経験を生かし、年間100件近く企業向けセミナーを行う。

援川社長は、特に近年「強情型」と「狡猾(こうかつ)型」の2種類のモンスタークレーマーの相談が増えていると話す。

「前者の特徴は、どんなに説明しても中々納得してくれないこと。特にインテリでプライドの高く、自己中心的な人が多い。後者は、どうすれば企業側が困るか理解しているクレーマー。『ネットに悪評を書く』など、思わず担当者が不安になるような言葉を発する」

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3ステップで解決図る

このような悪質クレーマーに対し、どのような対応が有効なのか。援川社長は、「初期対応」、「見極め段階」、「対応方針決定」の3ステップを設ける方がよいと話す。

「初期対応」では、正当な苦情も不当なものも、同様に対処する。「クレーム対応を完全にマニュアルするのは難しいが、『丁寧な言葉』、『お詫び』、『低姿勢』の3点を心掛ける。この対応を誤ると、正当な苦情を言う顧客もモンスタークレーマーに変身してしまう」(援川社長)

特に気を付けたいのが、お詫び。あくまで顧客に不快感を与えたことについて謝罪することにとどめる。これを本来非のないことについても認めてしまえば、悪質クレーマーに言質を与えてしまう。

見極め段階では、担当者からの報告を元に、部署内で苦情の事実と顧客の要求を把握する。この結果から、その後の対応方針を決定する。

苦情内容が正当なものだと判断された場合、問題があったサービスの内容を見直す必要がある。一方、不当なものである場合は、クレーマーに対して淡々と事実を説明し、時間をかけて対応していく。この時注意したいのは、「組織として対応する」という姿勢を明確にすること。

担当者個人ではなく、組織として要求に屈しない姿勢を見せれば、例え納得してくれなくても「この会社にこれ以上言っても無駄だ」と自然と問題が解決するからだ。

「このようにクレーム対応は、個人の技術よりも組織の強さが試される。意思疎通できていない、上司に相談できる環境がないなどといった場合には、その隙をモンスタークレーマーに突かれてしまう」(同社長)(提供: リフォーム産業新聞 6月14日掲載)

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