日本人が「ノーベル経済学賞」を受賞できない理由
ところでノーベル経済学賞にこれまで日本人が一人も選ばれていないのは、どういう理由によるものだろうか。もちろん日本に経済学者がいないわけではない。日本の多くの大学は経済学部を設けており、学者もほかのどの部門にも引けをとらないほどの数にのぼる。
そうした中で、日本のこれまでの経済学者には、欧米の学者の追随者や解説者が多かったという意見がある。つまり、新しい理論を構築した人が少なかったという意見がある。
また、世界が直面している経済的な現象に関する独自の分析や解決策の提示が少なかったことなど、経済学を現実に活用する姿勢が甘いといったことも要因として考えられそうだ。そして、日本語による論文が認知度向上を妨げになっているとの見方もある。
ノーベル経済学賞の今後
経済学のように、自然科学と比べて明確な理論やモデルの優劣が決まらない分野に「ノーベル賞」という権威を与えることについては、その正当性や行きすぎた影響について疑問視する向きがないでもない。ノーベル賞をもらった分野が「正しい経済学」だという、本末転倒の現象を引き起こしかねない懸念もある。
現に1990 年代には、多くのノーベル経済学賞受賞者を輩出しているシカゴ学派が大きな影響力を持ったし、ノーベル賞の受賞後に投機に失敗した例もある。1997年に共同受賞したマイロン・ショールズとロバート・マートンといった金融界の当時のスーパースターが設立したヘッジ・ファンド「LTCM(ロングタームキャピタルマネジメント)」が、同年発生したアジア通貨危機による市場の変化を読み誤って破綻したのだ。
それでも経済学賞が、文学賞や平和賞などよりもむしろ学問的であり、高い業績の客観性を持つことも事実だ。1990年代以降は広い意味で社会科学に与えられる賞になりつつあることから見ても、近い将来には、環境問題やエネルギー、人口、格差といった具体的な地球規模の経済問題に対して、ブレークスルーを与えた経済学者の受賞が増えていくものとも考えられる。
日本人候補者の筆頭は清滝信宏氏
ノーベル経済学賞の受賞について、日本人で最も有力視されているのは、やはり主流派の考え方を基礎に議論を展開している米プリンストン大の清滝信宏教授だろう。
清滝信宏教授はニューケインジアンであり、マクロ経済学をミクロ的に基礎付けしたことで知られている。経済に対する小さなショックが生産性低下の循環を引き起こすメカニズムを示した「清滝=ムーアモデル」を構築したことでも有名で、ノーベル賞を受賞する可能性の高い人を選出する「トムソン・ロイター引用栄誉賞」も受賞している。
現在の池田泉州銀行である池田銀行を創業した清滝家の一族で、東京大学経済学部を卒業した後ハーバード大学大学院に進み、博士課程を修了した。また、ハーバード大学から経済学のPh.D.を取得している。ここ数年、経済学賞の候補として必ず名前が挙げられる「常連」になっている。10日の発表に注目だ。(ZUU online 編集部)
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