あなたが車掌なら、どう対応するだろうか?

車内アナウンスの件についても同様である。車掌は日本人乗客が車内で「外国人観光客が騒がしく迷惑だ」といったクレームに配慮して「乗客間のトラブルを避けるために」アナウンスしたという。

その場をうまく収めるための現場の判断であり、差別の意図があったとは思えない。駅員と銀行員、職場環境は違えど同じサラリーマンである。私は彼らを批判する気にはなれない。

あなたが車掌なら、どう対応するだろうか?

むしろ、現場の最前線にいる彼らを批判する人々に、私は強烈な違和感を覚える。鉄道会社の「現場軽視」ともいえる対応にも怒りを覚えずにはいられない。鉄道会社は彼らを守るどころか、現場の対応は不適切とばかりに切り捨てたのだ。

現場軽視の「社内官僚」がクレーマーを助長させる

むしろ、都合が悪くなると現場の人間を切り捨てる、鉄道会社の「現場軽視」の姿勢こそがクレーマーを助長させているのではないか。

マスコミの取材に応じ謝罪するのは本社の広報担当部署だ。彼らは現場の苦労など知る由もない。経費削減で人員は削られながらも、過密な運行ダイヤを維持するために現場には相当なストレスがかかっているだろう。本社のエリート達にとって現場の苦悩は、単なる「効率」と「コスト」の問題にしか映っていないのかもしれない。だから、何か問題が発生すれば現場の当事者を「魔女に仕立て上げ」切り捨ててしまうことで解決しようとするのだ。

銀行だって同じだ。あなたの会社だってきっと同じことがあてはまるはずだ。現場を知らない「社内官僚」が会社の経営を動かし、権力を握っている。社会の閉塞感が強まるにつれ、彼らの関心は自らの保身と出世ばかりに狭まっている。

会社全体を見渡すことができる人、会社として世の中にどのように貢献すべきか問題提起できる人は「社内官僚組織」の中で生き残っていけないのだ。

現場は「魔女狩り」に怯えながら過酷な業務をこなしている。そもそも、従業員だって企業のステークホルダーではないのか。不当なクレーマーから、従業員を守ることは企業の役割でもあるはずだ。

善良な消費者にとってもクレーマーは敵である

クレーマーの問題は、善良な消費者であるあなたにとっても無関係ではない。

私の銀行業務のひとつにクレーマー対応がある。クレーマーとの面談では、延々と身勝手な要求や価値観を押しつけられ、出口のない禅問答のような受け答えが何時間も続く。この時間を他のお客様の対応に振り向けることができたなら、もっと多くのお客様に、もっとたくさんの有効なサービスを提供し、喜んで頂けるはずだ。そう考えると、クレーマーが社会全体の利益を損ねていることは間違いないだろう。

なればこそ、先の駅員の対応を笑い飛ばしたコメンテーターに私は憤りを感じるのだ。何の権力も持たない、発言さえできない人間を笑い飛ばすことは「魔女狩り」同様の野蛮な行為ではないのか。

ましてやマスコミがこれに乗じて笑いのネタにするなど、言語道断だ。反撃することができない人間を徹底的に叩くような社会の風潮がクレーマーを助長させている。そして、クレーマーの助長が世の中の、多くの善良な消費者に間接的に不利益をもたらしていることを訴えたい。

過度なクレームや法外な要求、なにより真摯に働く者に対する侮辱は絶対にあってはならない。もちろん、お客様に迷惑をかけたことはきちんと謝罪しなければならないが、それでも批判を承知のうえであえて言わせていただく。「クレーマーなんかクソくらえ!」と。(或る銀行員)

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