地区連銀がタカ派なのは構造的な問題

ところで、前回9月のFOMCでは3名の地区連銀総裁が利上げを主張して現状維持に反対票を投じているが、地区連銀総裁がタカ派なのには構造的な問題もある。

大統領選でも民主党のクリントン候補がFRBの組織改革を公約に掲げている通り、FRBと民間銀行は利益相反の関係にあり、特に地区連銀はその傾向が強いとされている。

FRBは銀行を監督する立場にあるが、地区連銀の理事の多くが民間銀行の意向を反映して選出されており、監督を受ける立場の民間銀行が監督者を決めていることが問題視されている。クリントン候補がFRBの理事から「FRBの監督下にある金融機関の出身者を締め出す」ことを公約に掲げているのはこのためだ。

「高圧経済」でタカ派を懐柔することも?

確かに地区連銀の主張は民間銀行の意向を代弁している可能性は排除できない。超緩和的な金融政策が長期化していること、特にイールドカーブがフラット化していることが銀行の経営を圧迫しており、銀行が速やかな利上げを要求していることは想像に難くない。

銀行の収益はイールドカーブがスティープ化することで改善が見込まれるので、短期金利の上昇を抑えつつ、長期金利の上昇を促せれば理想的である。

高圧経済はインフレを容認することから、利上げするにしてもそのペースはかなり緩慢となることが予想される。一方、将来を見据えた期待インフレ率が上昇し、長期金利を押し上げることが見込まれるので、長短金利差は拡大することになる。

インフレ目標の引き上げは、タカ派からの強い反対が予想されるものの、具体的な目標を設定せずに、高圧経済を目指すことでイールドカーブをスティープ化させる政策にすり替えることで、タカ派を懐柔できる可能性がある。

インフレ目標、引き上げの議論が進めばドル高要因に

一般に、インフレ率が上昇すると通貨の価値は弱まることから、その国の通貨は下落すると考えられているが、インフレ見通しが強まることで金利が上昇する場合には投資魅力が高まって上昇することもある。

インフレ目標の引き上げはドル高、ドル安どちらの要因にもなりうるが、現在の世界的な低金利環境を踏まえると、インフレ目標の議論が進展した場合には「ドル高要因」と考えたほうが無難であろう。

目下のところ、現在2%のインフレ目標が4%などの具体的な数値に引き上げられるとは考えづらいが、2%からのオーバーシュートを容認することで、実質的なインフレ目標の引き上げへと議論が進むシナリオもないとは言えないのだ。

今回のFOMCでの声明文や議事録を含め、当面はFRBのインフレに対する姿勢に変化があるのか注意深く観察したい。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

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