そして誰も何も言わなくなった

「日本株が上昇してきましたね。日本株のファンドを塩漬けにしているお客様に現状の報告と、今後の運用方針の確認をしてみましょうよ」

私の職場でもかつてはそんな会話が頻繁に行われていた。しかし、今では自分たちの仕事が増えるような提案をする人間は誰もいなくなった。正確には「残業しなければならない仕事」を提案することはタブーとなってしまったのだ。

皆、分かっているのだ。どんなに前向きに、どんなにお客様のことを思っていても「残業させてください」とは言えないのだ。残業を申請することで上司である私に迷惑がかかるのではと気を遣ってくれているのだ。

そう考えると、私はやりきれない気持ちになる。何もできない無力さにうちひしがれる。その結果、次第に仕事の質が低下していることは私自身、肌で感じている。このままではやがて顧客からの信頼も失うことになりかねない。

誰のための残業禁止なんだ?

こんな異常事態がいつまで続くのだろう。それでなくとも銀行という業種は収益性の悪化が顕著だ。このままでは衰退するばかりだ。経営陣は収益力の強化を求めながら、一方で様々な束縛を設ける。アクセルを踏むふりをしながら、ブレーキを踏むという、経営陣の姑息なやり方に多くの現場の人間は辟易している。

銀行だけではない。日本中の経営者に問いたい。

「誰のための残業禁止なんだ」
「何のための残業禁止なんだ」

残業禁止の真の目的が人件費の削減であるなら、そんな姑息な手段が正当化される世の中であって良いはずがない。そんな姑息な手段に手を染めた企業では必ず現場の士気は下がるし、優秀な人材の流出を招くばかりではないか。

自分の保身しか考えないイエスマンしか周囲にいなくなってしまった経営者たちよ、あなたたちが本当に聞かねばならないのは顧客の声であり、現場の悲痛な叫びだ。(或る銀行員)

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