物価目標達成次第で長期金利の誘導目標が変化?

二つ目は、グローバルな景気・マーケット動向が安定化し、日本も物価目標達成へのパスがしっかりしてきたことが確認されれば、2%超の物価に到達前に、日銀は長期金利の誘導目標を引き上げる可能性があるとみていることだ。

グローバルな景気・マーケット動向の回復がしっかりとしたものとなり、FEDの利上げが2018年も続けば、インフレ期待の上昇もともない、グローバルに金利水準の上方修正の動きは続くだろう。日本でも、失業率が2%台に突入し、総賃金の拡大が内需を強くする動きが意識されれば、日本の長期金利のフェアバリューは0.25%程度から0.5%程度に上昇する可能性がある。長期金利を0%程度に誘導するため、日銀は国債買いオペを年90兆円程度から更に増加させる必要が出てくるかもしれない。

しかし、財政赤字が縮小し、新規国債発行も減少する中で、それだけの買いオペのペースを続けることは困難となり、量の限界が切実な問題となる可能性がある。そうなった場合、まだ2%超の物価目標は達成していないが、日銀は長期金利の誘導目標を0%程度から引き上げ、量の拡大を回避するだろう。

ただ、長期金利のフェアバリューを誘導目標が下回り続けることにより、引き続き景気刺激効果があると説明することになろう。物価目標到達まで日銀がコミットメントしているのはマネタリーベースの拡大だけであり、長期金利の誘導目標はフレキシブルな対応が可能となっている。

長期金利の誘導目標が引き上げられる可能性があるほどに日本のファンダメンタルズが回復すれば、0-10年のイールドカーブもスティープ化することになり、金融機関の収益への下押しが大きく軽減されることになる。

日銀の政策による収益の圧迫への懸念で出遅れている金融機関の株価が上昇するとともに、金融機関の活動も活発化し、企業の活動を後押ししていくシナリオへ進んでいくと考えられる。そして、企業貯蓄率が、デレバレッジとリストラの継続によるプラスの異常な水準から、正常なマイナスに戻り、過剰貯蓄が総需要を破壊する力が一掃されれば、デフレ完全脱却となる。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

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