会計検査院
(写真=PIXTA)

会計検査院が2015年度の決算検査報告を作成し、内閣に送付したと発表した。「税金の無駄遣い」「不適切な会計処理」と指摘したのは1兆2189億円だった。これは2009年度決算報告以来過去2番目に多い金額で、1兆円超えは6年ぶり。指摘件数は前年度より115件少ない455件だった。

改善が求められる「処置要求」と「意見表示」では43件で1兆1606億円。省庁別の指摘件数で見ると、最も多かったのが厚生労働省の185件。次いで国土交通省の61件・農林水産省の40件と続いている。

無駄遣いの指摘金額は金融庁の1件だけで1兆964億円。この数字だけで全体の9割近くを占めている計算だ。次に多かったのは厚生労働省の337億円(指摘185件)、国土交通省の266億円(指摘61件)、農林水産省の213億円(指摘40件)といったところだ。

会計検査院の仕事とは

会計検査院は国民から集めた税金などが正しく有効に使われているかをチェックする機関だ。仕事を厳正に果たせるように他から制約されないようになっている。根拠法は憲法第90条(国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める)。検査対象は国のすべての会計だ。検査は書面検査と実地検査で、「正確性」「合規性」「経済性」「効率性」「有効性」の観点からチェックする。

検査の成果は内閣に送付され内閣から国会に提出される。この報告は国会で決算審査を行う場合の重要な資料となり、財政当局などの業務執行にも活用される。

報告には予備費の支出など8項目ある。例えば国の収入支出の決算の確認や決算金額と日本銀行が扱った、国庫金の金額との不符合の有無もチェックされる。あるいは法令や予算に違反し又は不当と認めた事項についても調べることになる。

会計検査院の課題

高い独立性を持つ検査院だが、はたしてその期待されている役割を果たしているのか。実は会計監査の対象となる省庁・機関は3万8000 にのぼると言われている。

ところが事務総局の職員は1251人(2016年1月現在定員)。この人数で巧妙に隠蔽された不正行為を摘発したり、税金が使われた先の費用対効果まで検証したりすることが可能だろうか。対策としては組織規模の拡大、監査担当者一人当たりの生産性を引き上げる必要がある。

ほかにも問題はある。たとえば検査院は強制捜査権を持っていない。そのため検査を受ける側が協力的であることが不可欠だ。この状態のままでは証拠の隠蔽や改ざんを防止しながら監査を行うことは困難だ。捜査権の強化は検討課題だろう。

現在の日本で、税金の使途に問題が無いと考えている人はいないだろう。不正や横領についての議論の余地はない。税金の使い道を国民が把握する方法を見直す必要がある。会計検査院の働きに期待したいものである。(ZUU online編集部)

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