リグ稼動数とともにDUCの動きにも注目
原油価格の下限を左右しているのがOPECであるのに対し、上限に影響を与えているのは米シェール企業となる。
11月4日現在の米国内でのリグ稼動数は450基と5月27日時点の316基をボトムに増加を続けている。これは近い将来、米国内での生産量が増加することを示唆している。
米エネルギー省はダック(DUC)と呼ばれるフラッキング(水圧破砕)前の井戸の数を公表しており、9月現在は5069本となっている。主な掘削作業は終了しているが、生産はまだ開始していない井戸であり、価格の回復を待って生産を開始することが見込まれる。DUCはフラックログ(Fracklog)とも呼ばれ、隠れ在庫として知られている。
2014年1月に4000本以下だったDUC数は、価格の下落が始まった2014年の8月頃から増え始め、今年1月には5500本を超えている。価格が回復した5月以降は緩やかに減少して現在に至っている。
米原油生産量は昨年6月の日量961万バレルをピークに今年7月には843万バレルまで低下した。約1年で120万バレルほど減少したが、10月28日現在は852万バレルと小幅ながらも持ち直している。
生産の動きはリグ稼動数から2カ月程度遅れる傾向にある。事実、リグ数の減少に歯止めがかかってから約2カ月後に生産も底入れしており、ほぼ予想通りの動きとなっている。ただし、その後もリグ稼動数が増加している割には、生産はほぼ横ばいとなっており、期待されたほど伸びていない。
シェール企業の採算ラインは40ドル前後まで低下しているが、利益を確保するために50ドル以上の価格まで増産を見送っているもようだ。とはいえ、シュエール企業にとっては積み上がったDUCの解消が優先課題となっており、今後はDUCの在庫解消に伴って生産も徐々に増加することが見込まれている。
増産ペースは価格動向の影響を受けることから、50ドル以下で推移する限り、大幅な生産の回復は見込みづらい。一方、50ドルを超えてくると増産ペースも加速する可能性があり、原油価格の上値を抑制することになるだろう。
天然ガスの価格低下も重しに
原油と同様に天然ガス価格も低迷しており、代替の動きが強まることで原油の需要を減少させる可能性がある。
天然ガス価格は11月8日現在で100万BTU当たり2ドル台後半となっている。価格を3ドルとすると熱量等価換算での原油価格は1バレル当たり18ドル程度となる。しかし、代替には諸費用が発生することから、採算ラインとしては30ドル、利益を確保するためには45ドル程度がひとつの目安となる。
もちろん、天然ガスの価格が上昇すれば代替価格の目安も上昇することになる。とはいえ、シェールオイルの生産に伴ってシェールガスも供給過剰となっており、天然ガスはしばらく低価格で推移することが見込まれている。
天然ガスの低価格が維持された場合、エチレンなどの石油化学製品の原料が石油から天然ガスに代替される可能性があり、石油需要の減少につながると考えられている。
原油価格が上昇すると株高になる?
原油価格が上昇するとエネルギー企業の業績改善が見込まれることからエネルギー株を中心とした株価の上昇が期待できる。
原油価格と株価はともにリスク資産とみなされており、マーケットのセンチメントがリスクオンだとともに上昇し、逆にリスクオフだとともに下落することになる。
景気見通しの改善は、原油価格には需要増加による上昇要因となるが、同時に株高要因ともなる。原油高が直接的に株高を招くわけではないが、強気の経済指標やドル安の場合にはともに上昇することが多いので、連動しているように見える。
ただし、原油価格の上昇は必ずしも株価を支援するわけではない。原油高がインフレ懸念を強める場合には、利上げ見通しが株価を圧迫することもある。
したがって、原油価格の株価への影響は一概には言えないのだが、現在のように世界的に低インフレが問題視されている状況では、原油価格と株価はおおむね連動すると考えて良いだろう。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)
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