NISA は上手に利用すれば有利な資産運用が可能となりますが、一方で、非課税となる期間が限定されている等の様々な制約があり、きちんとした注意点の理解の基に利用しないと後々後悔することになりかねません。そこで、以下においてNISA利用の注意点を見ていきます。
NISA(ニーサ/日本版ISA/少額投資非課税制度)口座開設に当たっての注意点
NISAの運用は2014年から開始されますが、金融機関では既にNISA口座の開設予約を受け付けており、2013年8月末時点で150万件を超えています。もっとも、その中には、制度を理解せず、複数の金融機関に予約をしてしまっている方も数多くいるようです。
NISA口座の開設は一人につき一口座のみであり、複数の金融機関に同時に開設することはできないこととなっています。そして、開設した口座を他の金融機関に変更することは、当初4年間は不可能となっています。従って、どの金融機関に口座を開設するのかを決定することが、まず重要な注意点になってきます。
例えば、銀行でもNISA口座の開設は可能ですが、銀行に開設した場合には、株式や上場投資信託の取引はできません。また、取り扱っている金融商品の数が少ない金融機関に開設した場合には、自分の運用スタイルに合った金融商品がないという事態も想定できますし、仮に自分に合った金融商品があったとしても、他の金融機関の手数料の方が安いといったことも出てくるでしょう。そのため、口座を開設する際には、金融機関の行っているキャンペーンや、営業マンの勧めに軽々しく乗ってしまうことなく、自分が購入したい金融商品があるか、また手数料は低く抑えられているかといった、口座の利便性をしっかりと吟味することが注意点といえます。
NISA(ニーサ/日本版ISA/少額投資非課税制度) 損失発生時の注意点
投資の格言、注意点の一つに「卵を一つの籠に盛るな」というものがあります。これは、一つの籠に全ての卵を入れておくと、その籠を落とした時には全ての卵が割れてしまうという意味で、投資をするに当たっては、投資資産の全額を一つの金融商品に投資してはいけないと警告しているものです。つまり、リスクが異なる様々な金融商品に少額ずつ分けて投資すれば、ある金融商品から生じた利益と他の金融商品から生じた損失を相殺することができ、大きな損失を被らなくて済むということです。
しかし、NISA口座では、利益が生じた場合には非課税となりますが(これがNISAの最大のメリットです)、逆に損失が発生した場合には、他の課税口座(特定口座や一般口座)で生じた利益と損益通算できないこととなっています。つまり、分散投資するに当たり、NISA口座をポートフォリオの一部に組み込むことができないということです。従って、投資する際には、この点を十分考慮に入れたうえで、ポートフォリオを組むことも重要にな注意点になってきます。
NISA(ニーサ/日本版ISA/少額投資非課税制度)での金融商品の選択についての注意点
それでは、NISA口座で購入するのにふさわしい金融商品とはどのようなものなのでしょうか。もちろん、投資される方の保有資産や年齢、運用方針等によって、ハイリスク・ハイリターンのものからローリスク・ローリターンのものまで様々でしょう。しかし、どのような方においても、金融商品を選ぶ際に注意点が一点あります。
NISAは、イギリスで採用されているISA(日本はこの制度を参考にNISAを導入しました)とは異なり、非課税期間が限定されています(現段階のはなしであり、注意点として今後改訂される可能性はございます)。NISAは、2014年以降2023年までは新たに5年間の非課税口座が利用可能ですが、それ以降は新たに設定することはできないため、最も長期に運用したとしても、2027年には運用が終わってしまいます。
その際、保有している金融商品を売却しない場合には、他の課税口座に移行することになりますが、移行後の当該金融商品の取得価額は、移行時の時価とされています。そして、これが大きな問題となるのです。
例えば、値上がりすると期待して100万円で購入した金融商品の価額が、思いに反して下落し続けて、非課税期間が終了する時点で70万円になっていたとしましょう。この場合、売却すれば30万円の損失が発生し、上述したようにその損失は他の課税口座で生じた利益とは損益通算できないため、そのまま30万円の損失が確定してしまいます。
一方、売却せずに課税口座に移行すれば、損失は確定せず、今後値上がりすれば投資元本の100万円を回復し、問題がないのではと考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、先程述べましたように、移行時の時価が当該金融商品の取得価額になるため、移行後の取得価額は100万円ではなく70万円となり、時価が100万円に回復した時に売却すると、差額の30万円は利益とみなされ課税されてしまうのです。100万円で購入したものを100万円で売却しただけなのに、です。
このことから言えることは、NISAは、利益が生じるような投資にはメリットがあるのに対して、損失が生じるような投資においては、通常の課税口座で行う投資よりもデメリットが多いという注意点が存在まします。従って、NISAを利用するに当たっては、損失が出ない、あるいは一時的に損失が発生しても、非課税期間終了時までには価額が回復すると想定できる金融商品を選択することが重要だといえます。
現在、政府の方針として「貯蓄から投資へ」という流れがあり、また金融機関による顧客の囲い込みのため、NISAについてメリット(投資から利益が発生する場合)のみが強調されすぎていて注意点が無視されているように感じます。初めにも述べましたが、NISAは、イギリスのISAと異なり制約が多く存在するため、制度自体が複雑になってしまっています。従って、利用する際には、制度のメリットだけではなく、デメリットもきちんと理解したうえで、自らに合った投資をされることをお勧めします。
【NISAの基礎シリーズ】
第1章 NISAとは?〜はじめてのNISA(ニーサ)/少額投資非課税制度/日本版ISA〜
第3章 投資初心者の方へのアドバイス〜はじめてのNISA(ニーサ)/少額投資非課税制度/日本版ISA〜
第4章 投資経験者の方へのアドバイス〜はじめてのNISA(ニーサ)/少額投資非課税制度/日本版ISA〜初級編
第5章 目的別の資産運用〜はじめてのNISA(ニーサ)/少額投資非課税制度/日本版ISA〜
第6章
NISA取扱金融機関の比較〜はじめてのNISA(ニーサ)/少額投資非課税制度/日本版ISA〜