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今回、REITの再点検をしてみようと思います。2014年1月からスタートしますが、REITもNISA口座を利用する投資商品としては有力な候補となります。(NISA、少額投資非課税制度という言葉は、最近、テレビや新聞などで、見聞きする機会があるかと思います。NISAは、新たに時限的に実施される投資優遇税制制度です。イギリスのISAを手本としており、日本版ISAとも呼ばれています。)REITの性格を理解し、NISAの投資戦略の選択肢の1つと考えてみましょう。

NISA(ニーサ/日本版ISA)でREITに期待すること

REITは「Real Estate Investment Trust」の略称です。東京証券取引所に上場されている銘柄はREITの頭にJapanのJを付けて、J-REITとも呼ばれています。
その仕組みは「多くの投資家から集めた資金と金融機関から借り入れた資金によってオフィスビルやマンション、商業施設、ホテル、物流施設などの収益物件を購入・運用し、その収益を投資家に分配する」というものです。
簡単に言ってしまえば、「投資家みんなで大家になって資産運用会社に収益物件の運用を委託している投資商品」と言えます。

REITは不動産投資信託という形をとっていますが、この仕組みを利用することによって、個人が自ら中古ワンルームマンション等の実物不動産を購入して運用するよりも大きなメリットを得ることができます。特に投資資金が限られている人にとっては、手掛けやすい不動産投資ということができます。ここでは「安定した収益」「分散投資」「海外不動産の取り込み」といったREITの魅力を見ていくことにします。2014年から始まるNISAにおいても、分配金利回りが比較的高いREITは有力なNISA口座利用候補となり得ます。

NISA(ニーサ/日本版ISA)とREITで安定した収益

REITの最大の魅力ともいえるものがこの「安定した収益」です。
中古ワンルームマンションや1棟アパートで不動産投資をしている場合でも「安定した収益」は期待することができますが、REITは数多くの物件に投資をしています。2013年11月1日時点で最も時価総額の大きい日本ビルファンド投資法人(証券コード8951)の場合、73棟もの収益物件で運用をしています。この数の多さが「安定した収益」を生み出している要素の1つとも言えます。
つまり、空室リスクの分散を図ることができているのです。日本ビルファンドの場合、最も取得額が大きい物件であるNBF大崎ビルでも全体からしてみれば、投資比率は6.32%でしかありません。

「安定した収益」を生んでいるもう1つの要素は、資産運用会社におけるコスト削減の継続的な取り組みです。各銘柄の運用報告書ではしばしば建物管理費の削減、金利の引き下げによるコスト削減の実現を目にします。家賃が下がってもコストも削減しているために収益が安定するのです。これはREITという巨大な組織体だからできることです。ロットが大きいからこそ、相手も交渉に応じてくれるわけです。個人がアパート1棟保有しているくらいではなかなかできることではありません。

NISA(ニーサ/日本版ISA)とREITで分散投資

REITの魅力の2つ目は分散投資ができるということです。前述しましたが、1銘柄においても数十棟の収益物件を保有し、空室リスクを分散しています。これだけでも大きなメリットですが、複数の銘柄を組み合わせることにより、分散投資の効果はさらに高まります。

REITは各銘柄によって特徴があります。東京に集中投資をする銘柄、大阪をメインに投資をする銘柄、全国の主要都市に万遍なく収益物件を保有する銘柄、といった具合に地域で分けることもできますし、オフィスビル、ファミリータイプマンション、商業施設、物流施設、ホテルのそれぞれに特化しているもの、いくつかを組み合わせて複合的に運用をしているもの、さらに大型物件を中心に運用をしているもの、中小規模の物件に限っているものと様々です。

特徴の異なる銘柄に投資をすれば、日本のほとんどの不動産種類に投資をしていることと同じ効果を得ることができます。仮に1億円で不動産投資をしようとした場合、都心部のアパートであればせいぜい1棟、中古ワンルームマンションでも8戸から10戸程度の物件を保有することしかできません。しかし、1億円をREITに振り向ければ、数多くの銘柄を複数口手にすることができます。どちらの方が、分散効果が高いかは一目瞭然と言えます。

NISA(ニーサ/日本版ISA)とREIT海外不動産の取り込み

今後、J-REITにおいて注目しておきたい点が海外不動産の取り込みです。2013年11月1日現在、海外不動産を運用資産に取り込んでいるJ-REITはありません。しかし、11月22日に上場されるイオンリートには海外不動産(イオン・タマン・ユニバーシティ・ショッピング・センターが組み込まれる予定)が含まれており、J-REIT初の海外不動産を含んだ銘柄となります。2007年5月にはJ-REITによる海外不動産の取得は制度上解禁されていましたが、この制度では海外不動産の取得は事実上困難となっていました。そこで、更なる改正を行い2013年6月に投資信託法(投資信託及び投資法人に関する法律)が成立、J-REITが海外不動産に投資をしやすくなりました。

今後はイオンリートに続き、海外不動産を運用資産に取り込む銘柄も出てくることが期待されます。海外不動産を取り込める最大の魅力はその国の成長力をJ-REITへの投資を通じて享受することができるという点です。個人で海外不動産に投資をするということは、かなりの情報収集と勇気がいりますが、不動産運用のプロが集まるREITと通じて投資をすれば、海外不動産への投資に対する敷居も下がることになります。

NISA(ニーサ/日本版ISA)での銘柄選別は慎重に

2013年11月1日時点で東京証券取引所に上場されているJ-REITは42銘柄あります。J-REITは銘柄によって、その特徴が大きく異なります。J-REITだからという理由で投資をするのは大きなリスクを負いかねません。分配金が数期連続で増配されている産業ファンド投資法人(証券コード3249)のようなものもあれば、グローバルワン投資法人(証券コード8958)のようにテナント1社から解約通知を受けたことにより、減配を余儀なくされた銘柄もあります。MIDリート投資法人(証券コード3227)では、主要テナントであるパナソニックの業績不振の影響を受けていた上に、含み損を抱えていた物件を処分することにより、2013年6月期では9割を超える減配を余儀なくされました。

どの銘柄がどのような物件で運用をしているのか、鑑定評価はどのようになっているのか、テナントに偏りはないか、といったチェックを欠かさないことが重要です。

分配金利回りで飛びつくのではなく、その分配金が継続的に支払われ続けられるかという観点が必要となります。継続的な分配金を得られるREITをNISA口座で保有すれば、10年に渡って得られる非課税効果も大きなものとなります。

>>>応用編へつづく