「草食系」「肉食系」という言葉があります。男性や女性の恋愛観や性格を言うものですが、投資の世界でも「草食系投資」という言葉が生まれ、独立系投資信託会社3社が「草食系投資隊」というグループを結成しました。投資というと、イチかバチか、短期決戦、弱肉強食という、とかく「肉食系」のイメージがつきまといます。
「草食系投資」とは、「ゆっくり、こつこつ、争わずに共存共栄」で、長期的に資産形成を目指そうという理念の投資方法です。その源流は「長期で安定的な運用成績の向上を目指す」という理念で澤上篤人氏が立ちあげた「さわかみ投信」ですが、「草食系投資隊」は長期安定投資をめざしながらも三者三様のアプローチを行っています。はたして、「草食系」とうしとNISAの相性はいかほどなのでしょうか。
NISA(ニーサ/日本版ISA)から見る国内成長株に投資する「ひふみ投信」
藤野英人氏がCIOを務めるレオス・キャピタルワークス株式会社の「ひふみ投信」は、カテゴリー的には日本型アクティブファンドと言えます。「ひふみ投信」は中小を含めた日本の成長株に注目してファンドに組み入れるのが特徴です。「株価が将来的に大きく成長する銘柄を見つけて早く仕込んでおく」というスタンスです。
「小さい芽が出たばかりのうちに投資して、大きな木に育つのを待つ、あるいは、一見枯れたように見えている時に投資して、生き生きとした木に回復するのを待つ」という、まさに草食系投資のスタンスです。同社は、そんな企業を見つけるために、4,000社の企業訪問を精力的に行い、経営者との会話や実際の現場訪問などを通じて成長する企業とそうでない企業を見極めています。
これは人が人を判断する「定性的」な評価で、同社の特徴です。そのうえで「ロボットくん」というシステムで、割安株とそうでない株を「定量的に」分析しています。同社ではこれを「アートとサイエンスの融合」と位置づけています。内需が順調な時期には内需株に投資し、円安になって外需が息を吹き返すようになると外需株を組み込む、という、運用を行っています。
NISA(ニーサ/日本版ISA)から見る30年を見据えた「コモンズ投信」
澁澤健氏が会長の「コモンズ投信」も、「ひふみ投信」と同じく日本型アクティブファンドです。「コモンズ投信」は、「厳選した企業に30年投資する」というスタンスです。澁澤氏によれば、上場企業4,000社のうち、30年もの間繁栄すると候補に上がるのはそれほど多くはなく、わずか数百社で、組み込む候補になるのは70社程度だ、とのことです。商品名は「コモンズ30ファンド」で、組み込み銘柄も約30社と、30という数字にこだわっています。同社はこの30社を、日本企業の中で世界の成長を取り込み、その舞台で活躍できる「真のグローバル企業」を中心に選んでいます。また、月額3,000円から始められる「つみたてプラン」も用意しています。(スポット購入は10,000円から可能、つみたてプランとスポット購入の併用も可能)。30年の長期投資というスパンは、ちょうど一世代に相当します。それだけの長い目で、投資家の手で未来を作ろう、というのが同社のスタンスです。30年間の間解約できない、というわけではなく、いつでも自由に解約できます。
NISA(ニーサ/日本版ISA)から見る負けない投資を目指す「セゾン投信」
中野晴啓氏が社長の「セゾン投信」は、「インデックス投信」に分類されます。インデックス投信は日経平均やダウなどの指標と同じ値動きを目指して運用するファンドです。これはつまり市場の平均点を取りに行くというスタンスで、「負けない投資」を目指すものです。そうしたスタンスのもとに、同社では「国際分散投資」を行い、株と債権にほぼ半分づつ投資してリスクを分散させています。投資先は先進国だけでなく、新興国も含まれています。こうして「世界経済の平均」をなぞる運用設計を行っています。「インデックス投信」は、運用コストが安い、というメリットもあります。コストを下げて、投資家の利益の最大化を目指すことが可能になるのです。「セゾン投信」は、投資に興味がない人でも、そこそこの資産形成ができるように、とスタートしたファンドです。
「草食系投資隊」3社の商品は、それぞれ特長的ですが、長期的な投資、市場の短期的な動向に一喜一憂せずに、長い目で資産形成を図り、そして長い目で企業や経済の成長を見守る投資、という点では一致しています。これはまさに、NISAがめざす、長期的な資産形成に合致したものです。これから投資信託を始める人も、「肉食系投資」の経験は豊富だけど「草食系投資」という新たな分野を試してみようという人も、気軽に始めることができる商品です。上記3つの投信もNISA対応です。
ただし、金融期間によって扱う投資信託商品が異なりますので、NISA口座を開設する金融機関を選定する際は注意が必要です。もしその会社のNISA用口座では上記の投信を取り扱えないとなった場合、最悪3年、NISAでのアプローチはできなくなります。
NISAの一番の注意点ですね。
いずれも独立系・直販の投資信託ですので、NISA口座での運用を希望される場合は、各投信のホームページを通じてお問い合わせください。