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NISAでの運用で中心的なものと言えば投資信託です。投資信託といえば、株式や債券で運用する投資信託が中心ですが、その他にも不動産や商品で運用するものや、比較的認知度の低い指数に連動するもの等様々なものが存在します。そこで、ここではあまり馴染みがないと思われる商品投資信託についてみていこうと思います。


NISAでとり組む上級者に向いた投資信託

平成25年8月末において、国内の投資信託は4,224本存在し(ETF、REIT含む)、上場会社数を上回っています。これは、時代に即して様々な投資信託が組成されているということと、顧客に頻繁に投資信託を乗り換えてもらい、その際に発生する手数料で儲けようと思っている金融機関の思惑とが相まって、投資信託が増加してきたことによります。

もっとも、その多くは株式や債券で運用するものですが、中には貴金属や原油、穀物といった商品で運用するものがあります。これらの商品投資信託は、認知度が低いため入ってくる情報量は自然と少なくなるうえ、ボラティリティ(価格の変動)が比較的大きいため、投資初心者が手を出すには危険で、投資上級者向けの投資信託といえます。

商品投資信託を購入するに当たっての注意点は、まず何より、投資信託によって価格変動の要因が多岐にわたるということです。
たとえば、トウモロコシを投資対象としている投資信託であれば、トウモロコシの生産地の天候によって価格が変動します。そのため、日本の天候が1年を通して平年並みであったとしても、トウモロコシの大生産地であるブラジルの天候が例年とは大きく変化した場合には、当該投資信託の価格は大きく変動してしまうため、日本の気象のみに気を配っていても価格の変動を予測することは不可能になってしまいます。

また、同じ商品投資信託といえども、WTI(アメリカの原油先物価格)や金、レアメタルに投資している投資信託の価格は、それぞれ異なる理由で変動します。したがって、商品投資信託は、投資対象によって価格の変動要因が様々ですから、それらを常にチェックできる方でないと大きな損失を被る可能性があります。

また、他の注意点としては、投資信託の繰り上げ償還が挙げられます。商品投資信託は、一般に、株式や債券を対象にした投資信託に比して、残高が少ないことが多いです。そのため、投資信託として運用できる最低限の残高が確保できなくなった場合には、早期に償還されてしまう虞が生じます。その際に、当該投資信託の価格が投資額を上回っていればそれほど問題はないかもしれませんが、下回っている場合には価格の回復を待つことはできず、損失が確定してしまいます。

以上のように、商品投資信託は、株式や債券投資信託とは異なるリスクが存在するため、実際に投資する際にはそれらのリスクを踏まえたうえで購入の意思決定をする必要があるでしょう。


リスクを回避することが重要

商品投資信託の価格変動要因が複雑であることは上述しましたが、ここではもう少し具体的に、どのようなリスクが存在し、それをいかにして回避するかについてみていこうと思います。投資対象としての商品には、大豆や小麦、トウモロコシ等の穀物や、原油や天然ガス、ガソリン等のエネルギー資源、金やレアメタル等が存在しますが、一般的に、これらは株式や債券の価格と連動しないといわれます。そのため、株式投資や債券投資と同時にこれらの商品で運用する投資信託を購入すれば、それぞれ異なった動きをするため、一方の価格が下落しても他方の価格が上昇しているということが起こり、損失を被るリスクを抑えることができます。

たとえば、穀物等は天候によって収穫量が大きく変動しますから、天候次第で価格は大きく上下し、株価や債券価格とはまったく関係なく動きます。
また、景気と比較的連動しやすい原油や天然ガスであっても、新たな油田が発見された場合や新たな採掘方法が確立された場合には、景気とは関係なく価格は変動します。これは、アメリカでシェールガス(シェールオイル)の開発が進んだことにより、景気が拡大基調にあるにもかかわらず価格が大幅に低下していることからもご理解いただけると思います。つまり、商品価格の変動は、株価や債券価格の変動要因とは異なる要因で起こることが多いため、株式投資や債券投資のリスクヘッジの手段として商品投資信託を用いるのは非常に有効だといえるでしょう。


NISAのデメリットを十分に踏まえた投資を

NISAは、NISA制度を導入するに当たって参考にされたイギリスのISAと異なり、非課税期間が最長5年に限定されています。したがって、非課税の恩恵を受けられるのは5年間に限られ、また5年後の時価が投資元本を下回っていれば、当該金融商品の価格はその時点の時価によって再評価されてしまうというデメリットが存在します。そのため、5年間で必ず利益が出るようにすることが大切であり、リスクを抑えた投資が必要になります。

そこで考え付くのが、購入時期をずらすドルコスト平均法ですが、このように徐々に購入していく方法ではNISA(ニーサ/日本版ISA)の非課税枠を最長期間使用することができません。ですので、資金的に余裕があるのであれば、NISA(ニーサ/日本版ISA)口座では、5年後には時価が投資元本を上回っていると思われる金融商品を一括で購入することが最も効率的な投資手法といえるでしょう。

上述したように、商品投資信託にはそれ自体が有するリスクがありますし、またNISA(ニーサ/日本版ISA)自体にもデメリットによるリスクが存在します。そのため、それぞれの特徴を把握したうえで、可能な限りそれらのリスクを軽減できるようなポートフォリオを構築し、そのポートフォリオに基づいた効率的な資産運用をして頂きたいものです。