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今回はこれからご定年を迎えられる方、あるいはご定年を迎えられたばかりの方に向けたNISAと投資信託の入門的な記事をご提供したいと思います。これからNISAでの資産運用をお考えの方のご参考になれば幸いに存じます。

NISAで定年後に投資信託をする!?

既にご定年を迎えられた方、あるいはあと数年でご定年を迎えられる方はこれまで社会に奉仕されてこられたのですから、悠々自適な第二の人生を送っていただきたいと心から願います。ただ、年金の支給年齢が引き上げられたり、構造的に不景気な状況から脱却できない状況など経済的には不安要素が大きな時代にあるということも確かな事実です。このような中で、「お金を働かせる」という方法の一つに投資信託という方法があります。

「投資」と聞いてなんとなく不安に思われる方は、健全な感覚をお持ちであると言えます。投資は当然、リスクが伴い、損をしてしまうことがあるためです。ただ、投資信託という方法は、株式を買ったり、不動産を買ったりするよりもリスクが極めて低い投資方法です。(投資信託がなぜリスクが低いかは、他記事となりますが「投資信託スタートの準備」をご参照ください)また、年金の支給額やタンス貯金では、これからの長い第二の人生、物価の変動に耐えられない可能性もあります。さらに、投資信託を通じた勉強会などで親しい友人や金融という新しい分野の学問を知ることができるなどの新しい生きがいの発見につながる可能性もあります。そして後述しますがNISAという新しい制度で税制上の優遇措置がスタートします。このNISAという制度は少額の投資に向いています。
定年後に少しだけ投資をすることを考えてみるということもひとつの方法としていかがでしょうか。

NISA退職金や年金の一部を投資信託に回す際の重要な心構え

投資信託をされる場合には、まず何より重要なことは「熱くなりすぎない」ということです。つまり、投資用の資金を生活資金とはっきり特別して、その範囲内で冷静に運用すると決めることが第一です。トリッキーな例となりますが、世の中にはパチンコで生計を立てている「パチプロ」という方がいます。「パチプロ」の方は投入する資金の上限をあらかじめ定め上でギャンブルという方法で生計を立てているそうです。

もちろん、投資信託をパチンコなどのギャンブルと同列にしては、金融機関や運用会社(ファンドといいます)の方がお怒りになるかもしれません。しかし、定年後のお金を運用することは、私は、ある意味、ギャンブルと同じような意識をもたれた方が良いと思うのです。退職後は、退職金と年金収入が基本となります。この退職金や年金は、これまで長い時間を社会にご奉仕されてきたことに対する対価であると同時に生活の主要な糧となります。

そのため、決して無理な運用などをせずに、ローリスク・ローリターンを目指されることが最も重要であるということができます。具体的には、先に述べましたように投資用の資金を限定して投資をすることが最重要になります。仮に損失が出たとしても「ああ、少し損をしたな。まあ良いか」と思える程度の金額であることが最も重要です。このような心構えのもとで、退職金のごく一部や年金収入の一部をNISA(ニーサ/日本版ISA)用の口座などを開設して投資信託に回されることが重要です。

NISAでの投資信託の商品の選び方1 リスクを避けること

では、NISA用の口座などを開設して投資信託をはじめる際にはどのような金融商品を購入することが良いのでしょうか。まず、ローリスク・ローリターンの商品を選ぶことが第一歩となります。つまり、リスクの低い商品です。投資信託は基本的にリスクの低い金融商品ですが、外国の上場株式などは、ある程度ハイリスクな商品となります。このような商品に手を出すと大切な退職金や年金を(資金の限度を定めているとはいえ)失ってしまう可能性が高くなります。そのため、リスクの低い商品を選ぶことが重要です。具体的には、債券(国債など)などへも投資するファンド(運用会社)の投資信託商品、インデックス投信と呼ばれるタイプのファンドへの投資などが一般的におすすめできます。

なお、NISA用の口座を利用するにあたっては、債券のみに投資する「公社債投資信託」というタイプでは、NISAによる非課税のメリットは享受できなくなりますので、この点はご注意ください。

NISA投資信託の商品の選び方2 目的をはっきりさせること

投資信託の商品を選ぶ際のポイントの2つ目としては、投資信託をされる目的をはっきりとされることです。誤解をおそれずに申しますと、投資信託商品を勧める金融機関などの中には、定年される方の「ふところ」を狙っている人間がいることも確かです。退職金や年金などの固定収入をお持ちになる退職者の方は、余剰の資産をお持ちとして投資を勧めたいというのが、多かれ少なかれの金融機関・運用会社の本音であると言えます。もちろん、商売は常に価値の交換ですので、投資してくださる方に対して少しでも多くの利益を上げて欲しいと考えて商品をすすめる金融機関等がほとんどでしょう。

しかし、こちらが投資信託を利用する目的をはっきりとさせずに、なんとなく説明を聞いてしまえば金融機関などが利益が大きい商品をすすめるのは当然のことと言えます。投資は、一方的にサービスを受けるものではなく、投資家の自己判断のもと対等な立場で取引をするものです(この点が会社など組織の内部で働くこととは大きく異なる点です)。そして商取引をするにあたっては、ご自身が一体何の目的で、いくら位の利益を上げたいのかをはっきりとさせることが何より重要です。
例えば、お孫様の結婚式の費用を出してあげたい、ご子息ご息女の生活のために贈与してあげたい、年に1度の海外旅行の資金にしたいなどの目的をはっきりさせることです。そしてその目的に沿った投資信託商品をアドバイスしてくれる銀行などで口座を開くことがよい取引となります。

なお、何度か登場しましたNISAというものについて簡単に説明しますと、NISAとは、少額投資非課税制度といい、投資金額100万円までであれば、そこから生じた利益(投資信託の場合には分配金といいます)については、税金がかからないという制度です。NISAを利用しない場合や投資金額が100万円を超えた部分から生じた利益には、2014年からは20パーセントの税金がかかる見通しです(2013年9月現在)。そのため、NISAの利用は、利益が生じた場合には大きなメリットがあると言えます。NISAの利用のためには、金融機関などでNISA用の口座を作る必要があります。NISA用の口座は2013年10月から作ることができ、各金融機関で様々なキャンペーンが実施されています。

NISAと投資信託、被害回避のために

投資信託の商品は、安定した、長年の実績がある商品を選ぶことが重要です。投資信託の新規の商品はご定年を迎えられる方が手を出すにはリスクが大きいと言えます。例えば、仕組債とよばれる投資信託商品は、弁護士などが被害が生じる可能性がある商品として注意するように呼びかけています。投資信託は、賢く利用することで、第二の人生をより実り豊かなものにするものです。決しておかしな商品には手を出さず、おかしいと思った場合にはすぐに消費者問題に詳しい弁護士や行政書士などに相談されることもリスク管理として重要です。