中央銀行は、通貨の発行権を持ち、民間銀行に対して資金を融通する、いわば銀行の銀行である。リーマンショック以降は、世界各国の中央銀行が行った緩和的な金融政策によって世界経済が回復してきた部分があり、中央銀行の動向は市場関係者から大いに注目されている。
日銀、FRBに並ぶECBとは
中央銀行と聞くと、まず日銀を思い描くかもしれない。正式名称は「日本銀行」であり、日本の中央銀行として金融政策を担っている。近年では、黒田総裁のもと、デフレ脱却に向けて緩和的な金融政策を積極的に行っている。
また、中央銀行と聞くとFRBを思い描く人もいるだろう。FRBはアメリカの中央銀行における意思決定機関で、「連邦準備制度理事会」という。アメリカ合衆国の中央銀行であるFRS「連邦準備制度」の最高意思決定機関である。世界最大の経済大国の中央銀行であることから、その一挙手一投足が多くの市場関係者から注目されている。
そのようななか、日銀やFRBと並び動向が注目されているのがECBだ。ECBとは「欧州中央銀行」のことであり、ユーロ圏に関する政策を実施する中央銀行だ。ドイツのフランクフルトに本店が置かれている。
ECB理事会とは
ECB理事会とは、ECBの最高意思決定機関として、さまざまな政策を行う機関である。ECB理事会は、政策理事会と呼ばれることもあり、この他に非ユーロ圏の中央銀行総裁9名が加わる一般理事会も開催され、ユーロ圏と非ユーロ圏の間の協力関係について議論されている。また、ECB理事会は定期的に開かれ、政策内容を発表している。
ECB理事会は、総裁、副総裁、選任理事4人の計6人による役員会、ユーロ導入国における各国中央銀行総裁19人、計25人で構成されている。特に現在、総裁を務めているドラギ氏が就任してからは、積極的な緩和策が目立つようになり、金融市場での存在感も増しているようだ。
ECBの金融政策
ECB理事会で決定した政策は、各国の中央銀行が具体的に実施することになる。ECBが実施している金融政策には、大きく分けて以下の2つがある。
<マイナス金利政策>
マイナス金利政策とは、銀行に資金を預けるだけで金利の分だけ資産が減っていくという政策である。日本でも実施されているこの政策は、ECBが初めて導入した。ユーロ圏に属する民間金融機関が中央銀行への預金を増やさず、民間企業や個人に資金が回るようにすることを目的としている。多くの場合、民間金融機関の預金金利はプラスで推移しており、一概に個人の銀行利用者が預金をしていると金利分が減っていくというわけではない。
<量的緩和政策>
ECBの量的緩和政策とは、2015年3月より2017年3月末までの間、毎月800億ユーロの国債等を買い入れる政策である。ユーロ圏の景気浮揚とデフレ回避を目的に行われている金融政策であり、2017年3月末以降の買入額を維持するか、もしくは減額するかが注目されている。
今後の動きに注目が集まっている
ユーロ圏は今、足並みが揃っているとは言いづらい状況だ。英国のEU離脱が決まっただけではなく、他のEU加盟国からもEU離脱を求める声が増えている。ユーロ圏は統一通貨を導入したり経済を統合したりすることによって、ヒト・モノ・カネの行き来を自由にし、経済格差をなくしていくという狙いがあった。しかし、現実はユーロという単一通貨を使用していることで、経済格差が広がっているといえよう。
経済格差の他にも、イタリアを中心とする民間金融機関の信用不安、ギリシャをはじめとした南欧諸国の財政再建、難民対策などユーロ圏は課題が山積みである。そのためECB理事会の金融政策だけではなく、今後のユーロ圏各国の動向も注目されるところである。(提供: 大和ネクスト銀行 )
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