BS/PL,損益計算書,不動産投資,貸借対照表
(写真=PIXTA)

損益計算書よりも重要な貸借対照表

前回の【第5回】では不動産投資家のための損益計算書について解説した。そして今回【第6回】では、同じく不動産投資における、貸借対照表について解説していく。損益計算書は年間の利益を明確にするためのものだが、貸借対照表は決算日時点の財産状況を明確にする。

現時点の状況を浮き彫りにするという意味では、貸借対照表の方がより指標としての重要度が高いと言えるだろう。

決算日の財政状況を映しだす、貸借対照表

貸借対照表(Balance sheet、略してB/S)の最大の目的は、決算日時点での財産の状況を明らかにすることだ。個人でアパートやマンションを経営している大家さんは、1月1日から12月31日までが事業年度だから、大晦日での財政状況となる。

貸借対照表は左に資産の一覧を、右に負債の一覧を書き出した一覧表だ。資産(=財産)は、1年以内に現金化可能な流動資産と、流動資産以外の固定資産からなる。負債(=借金)は、1年以内に返済期限がくる流動負債と、流動負債以外の固定負債からなる。純資産(=本当の財力)は「資産-負債」、つまり余裕資産だ。株主の出資による資本金や、過去に獲得した利益の累積である利益剰余金などで構成される。

貸借対照表は、純資産のうち自己資本の大きさを問われる。この余裕資産の割合を見れば、財政が健全かどうかがわかるからだ。以前は純資産、自己資金、株主資産は同じ意味合いだったが、2006年の会社法改正により集計対象が少し変わった。純資産から「少数株主持分、新株予約権」を差し引くと自己資本になる。

財務省「法人企業統計調査」平成29年度によれば、自己資本を総資産で割った「自己資本比率」は製造業48.6%、非製造業39.1%である。自己資本率が10%を切ると危ない財務状況と判断され、銀行も融資を渋る。

一旦資金繰りが悪くなったら最後、一気に傾むくこともある。自己資本を増やすためには当期純利益を出すことだ。当期純利益は利益剰余金として積み上がるので、貸借対照表の自己資本も増えていく。この内部留保こそが良い貸借対照表を作り上げる王道だが、資金の確保が可能ならば増資という手もある。

また多額な現金の計上は、ずさんな経営を疑われる場合がある。経営者が私用の現金を引き出し、立替金処理もしないままだと架空の現金が帳簿に残ったために現金が膨らむケースがよくあるからだ。しっかり管理していれば、手元現金は多くならない。

もし現金が帳簿と合っていない場合は、一旦合わせた後、現金出納帳を使うなどして現金との照合を確実にしていくべきである。

不動産投資の貸借対照表