財務諸表を見れば、その企業の経営状況を読み取れる。主な財務諸表は財務三表と呼ばれる貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書である。経理財務に苦手意識がある不動産投資家も、投資を続けるのならば損益計算書と貸借対照表は理解したい。

損益計算書が1年間の儲けを明らかにするのに対して、貸借対照表は決算日時点での財産の状況を示す。例えば、損益計算書は「2017年は500万円儲かった」と語り、賃借対照表は「不動産投資開始10年で自己資本が3000万円増えた」と語る。

拡大を望む不動産投資家にとっては損益計算書よりも重要となる賃借対照表について解説する。

【参考記事】
不動産投資家のための「損益計算書」の読み方

決算日の財政状況を映しだす、賃借対照表

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(写真=PIXTA)

貸借対照表(Profit&Loss Statement、略してP/L)の最大の目的は、決算日時点での財産の状況を明らかにすることだ。個人でアパートやマンションを経営している大家さんは、1月1日から12月31日までが事業年度だから、大晦日での財政状況となる。

貸借対照表は左に資産の一覧を、右に負債の一覧を書き出した一覧表だ。資産(=財産)は、1年以内に現金化可能な流動資産と、流動資産以外の固定資産からなる。負債(=借金)は、1年以内に返済期限がくる流動負債と、流動負債以外の固定負債からなる。純資産(=本当の財力)は「資産-負債」、つまり余裕資産だ。株主の出資による資本金や、過去に獲得した利益の累積である利益剰余金などで構成される。

貸借対照表は、純資産のうち自己資本の大きさを問われる。この余裕資産の割合を見れば、財政が健全かわかるからだ。以前は純資産、自己資金、株主資産は同じ意味合いだったが、2006年の会社法改正により集計対象が少し異なる。純資産から「少数株主持分、新株予約権」を差し引くと自己資本になる。

財務省「法人企業統計調査」平成27年度によれば、自己資本を総資産で割った「自己資本比率」は製造業46.4%、非製造業37.5%である。自己資本率が10%を切ると危ない財務状況と判断され、銀行も融資を渋るため、一旦資金繰りが悪くなったら最後、一気に傾むくこともある。自己資本を増やすためには当期純利益を出すことだ。当期純利益は利益剰余金として積み上がるので、貸借対照表の自己資本も増えていく。この内部留保こそが良い賃借対照表を作り上げる王道だが、資金の確保が可能ならば増資という手もある。

また多額な現金の計上は、ずさんな経営を疑われる場合がある。経営者が私用の現金を引き出し、立替金処理もしないままだと架空の現金が帳簿に残ったために現金が膨らむケースがよくあるからだ。しっかり管理していれば、手元現金は多くならない。

もし現金が帳簿と合っていない場合は、一旦あわせた後、現金出納帳を使うなどして現金との照合を確実にしていくべきである。

不動産投資の、賃借対照表

青色申告決算書の賃借対照表も、左に資産の部があり、右に資本の部がある。純資本は、元入金と「青色申告特別控除前の所得金」を足したものである。さて、不動産投資をする個人事業主も自己資本率が高くなくてはならないのだろうか。

否である。

この先、融資を受けて不動産を購入しないならば問題はない。年月の経過とともに借入金の返済が進んで負債が減っていくため、自然に自己資本率は向上する。当初は負債を利用して大きな資産を得て、資産から生まれる現金収入をもとに負債を圧縮して純資産を増やしていくという、正に不動産投資の神髄である。

しかし、借入金が残った状態で、新たな物件を購入しようとした場合、銀行からの融資を受けることは難しいという問題が浮上する。もし会社員や他の事業での安定した収入があるならば、銀行はその余裕を見込んだ分だけは融資してくれるかもしれない。

さらに銀行の融資担当は賃借対照表をそのまま見ずに、土地建物を積算評価で置きなおすことがある。例えば、預貯金300万円持つ人が、中古アパート5000万円を、融資5000万円を得て購入すると、簡潔な賃借対照表では資産5300万円、負債5000万円、純資産300万(自己資本率6%)になる。

この中古アパートの積算価値が4500万円だった場合は、賃借対照表では資産4800万円、負債5000万円、純資産▲200万と債務超過に陥る。収益価値が高くても積算価値が低い都市部の物件や、積算価値が低めの区分マンションでは珍しくない現象である。

一方、積算価値が5500万円だった場合は、賃借対照表では資産5800万円、負債5000万円、純資産800万(自己資本率15%)と自己資本が高く転じる。

不動産価格の高騰により、収益性と積算価値を兼ね備えた物件は滅多にない厳しい市場である。不動産投資の初期は誰もが収益性を重視するが、積算価値が低い物件が多いと自己資本率が低いために融資を得られず、不動産を買い進められない。賃借対照表を改善するために、積算価値が高い物件を収益性の高い物件で得た現金や自己資金で購入する人や、返済をできるだけ短期で終わらせる人もいる。

いずれにしろ、自分がどのくらいの規模の投資を目指し、どのような戦略でいくかを考え、賃借対照表をいつも頭の隅においておくことは、財務改善=不動産投資の成功につながっている。(ZUU online 編集部)

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