今回は円高や円安が我々消費者や日本経済にどのような影響を与えるのかお話していきます。 そもそも、円高、円安とはなんでしょうか。他の通貨に対して「円の価値が高くなる」ことを円高、「円の価値が低くなる」ことを円安と呼んでいます。「1ドル=100円」と「1ドル=80円」では一見すると1ドル100円のほうが高いように思えますが、「1ドルに換金するのにどれだけの円が必要か」ということですので、80円出すだけで1ドルに換金できる「1ドル=80円」のほうが円高の状態にあると言えるのです。
それでは、その円高や円安の具体的な影響について見ていきましょう。なお、ここでは説明を簡略化するため、実際の取引で発生する様々なコストについては省略しています。
円高のメリットとデメリット
結論からいうと,消費者の立場で見るとメリットが大きいのは円高です。
円高時のメリットとして,輸入品が安く購入できることが挙げられます。円高の時には先ほども述べたように、円高とは円の価値が高まるということですから、海外の物を買うときにはより少ない円で事足りるようになります。具体的な例を出すと、1ドル100円の時には1000円出して買っていた一本のワインが、1ドル80円の時には同じものが800円で買えるということなのです。また、スーパーに並ぶ輸入品も安くなる可能性がありますから、日本の輸入依存度は高いため日用品も安く買える期待も持てます。
一方、デメリットとしてまず挙げられることが、外貨預金や外国株式、海外不動産といった外国資産の目減りです。円高とは「外国通貨に対して円が強くなる」ということですから、円と交換した外国通貨は相対的に価値が下がってしまいます。また、円高により物価が安くなることは嬉しい事ですが、行き過ぎた円高はデフレーションを起こしかねません。デフレーション下では給料が上がらない、または下がるといった減少も起こりうるでしょう。
円安のメリットとデメリット
消費者にとって円安のメリットは外国資産の増加です。外貨預金や外国株式、海外不動産を保有していれば、外貨ベースの評価額が変わっていなければ、円貨に換金した時に投資額以上に投下資金を回収できます。円安時では、保有資産に為替差益が出ている状況なので、外貨ベースで元本割れを起こしていても、為替差益と相殺できる可能性もあり、投資耐久度が高まります。また、円安の場合、外国人旅行者にとってみれば、割安に日本旅行を楽しむことができるので、外国人の旅行客が増え、日本にいながらにして国際交流が広がる可能性があります。
一方、円安のデメリットは輸入品の値上がりや海外旅行が割高になるということです。輸入依存度の高い日本では、日用品の中にも円安の影響を受け、価格を値上げするものも出てくる可能性があります。
2012 年~13 年の円相場が日本経済に与えた影響
ご存知のように、2012年の10月から2013年前半にかけて急激な円安が進行しました。いわゆる「アベノミクス相場」です。対ドルで見ると、おおよそ20円の円安になりました。この円安は日本経済に大きな影響を与えました。
良い影響はというと、輸出企業の好調で経済に明るさが見えているということでしょう。海外での現地生産が進み、以前と比べれば円安のメリットは減っていると言われますが、それでも依然として日本経済にとって大きなウェイトを占めています。企業の業績が上向けば賃金増も期待できます。企業経営者の中にも賃金増に前向きな発言が増えてきました。賃金が増えれば消費意欲も向上しますので、経済全般に大きな効果を及ぼします。
ただし悪い影響も広がっています。それは輸入品を中心に物の価格が上昇しているということです。先ほども述べたように日本は多くの食料を輸入に頼っていますから、円安のデメリットを受けやすい状況にあります。パンや豆腐、ワインや乳製品など、次々と価格が上昇しています。また、燃料のほとんどを輸入に頼っている漁業では、燃料費の高騰を受けて休漁せざるを得ないところも出てきています。
おわりに 適度な水準に収まるのが大切
このように、円高や円安の双方にメリット・デメリットがあり、どちらがいいと一概に言うことはできません。過度の円高は輸出が大きなウェイトを占める日本の産業に大きな打撃を与えますし、過度の円安は輸入品の高騰によって消費者の懐を苦しめることになります。為替相場は一国の事情だけで決まるものではありませんが、適切な為替水準を保つことが経済の安定をもたらすと言えるでしょう。