昨年(2012年11月)、ZUU-ONLINEの記事でも触れましたが、現在シェール革命に関する話題が盛り上がっています。
参考:世界を変える大革命?〜話題のシェール革命についてお勧め記事まとめ〜
「シェール革命とは何か?」を先に簡単にまとめますと、技術革新によって、今までは採掘が難しかった頁岩層(シェール)から、低コストで石油や天然ガスを採掘出来るようになった事です。またこの事によって、石油ガス資源の価格や採掘地が変わるため、他の産業や政治動向への波及効果も大きく、その波及効果全体をもってシェール革命と呼ぶ場合もあります。
(頁岩層から採掘できる石油をシェールオイル、ガスをシェールガスと呼びます。)
そしてその影響は非常に大きいと言われています。
例えば、在来型と言われる、これまでの技術で採掘が可能であった天然ガスの世界の総埋蔵量が6400兆立法フィートだったのですが、シェールガスの採掘可能埋蔵量は6622兆フィートも存在し、人類の利用可能資源総量は倍増する計算です。
本日はこのシェール革命について、最も盛んな米国を中心に、中国や欧州、そしてロシア等、世界の各国・地域がどのような状況にあるのかの比較をお届けします。
【参考】
シェール革命の動向と予測vol2〜影響を受ける産業って?〜
シェール革命の動向と予測vol3〜注目10銘柄+おまけ〜
◉シェール革命を取巻く状況〜アメリカ〜
シェール革命はアメリカを中心に始まりました。その影響も最も大きく受けています。
そして、最大のインパクトは、エネルギー・資源コストの低下でしょう。
例えば、米国内ではシェールガスの登場により、天然ガスの価格が5年前の1/3の価格に急落しています。結果、ガスや石油を元にプラスチックや合成繊維等を製造する米国の化学業界は、競争力を取り戻しつつあり、設備投資ブームに沸くようになりました。
また、資源価格の低下によるエネルギーコストの低下は、化学産業に限らず、米国の製造業全体の大きな助けとなっています。
エネルギー増産によって、直接的・間接的に生み出された雇用は170万人以上にも及ぶという試算もあり、「シェール革命が無ければ失業率は現状(8%弱)より高く、米国の景気回復は遅れていただろう」と囁かれるほどです。
また、その他に、採掘関連産業が、米国内で大きな雇用を生み、米国内の自治体の増収要因にもなりました。例えば米国内でシェールオイルの一大産地と呼ばれるノースダコタ州では、石油生産量が5年前の日量13万バレルから、73万バレルに急増しています。そのために、新たな雇用も多く生まれ、加えて石油会社からの税収で財政も安定しており「ノースダコタの奇跡」と呼ばれる程の経済発展を享受しています。
参考:各雑誌2013年予測特集の要点まとめ【世界経済編】
上記の他に、国内資源の開発による、エネルギー・資源の海外依存度の低下も見逃せません。
この事は米国の中東資源への依存度を下げる事に直結し、政治力の増大が予想されます。また複雑な要因が絡むため、予断は許されませんが、資源確保を目的とした中東での軍事的覇権の確立を行う必要が低下したため、軍事費の縮小などにも繋がる可能性があると言われています。
また、米国では経常収支が慢性的な赤字となっていますが、その改善への影響も大きいと言われています。米国の経常赤字の大半を占めるのは貿易赤字であり、その貿易赤字のうち6割前後を石油等のエネルギー関連が占めているからです。
国際エネルギー機関(IEA)は、米国は2030年頃には石油の純輸出国になると予想しており、そうなれば経常収支の改善に大きく役立つものと思われます。経常収支の赤字はドル安要因となる為、下落基調だったドルに対して上昇圧力となる可能性も存在します。
これだけ様々なメディアで注目されるのも当然といえる程、米国への影響は大きいと言えるでしょう。
※ちなみにですが、アメリカと異なり現在日本では採掘可能なシェールガス・オイルはあまり多く見つかっていません。しかし代わりに地熱発電等別の代替資源・エネルギーが注目を集め始めています。